もしも雨が止んだなら… | ナノ
11話

赤也SIDE

こんなに朝早く目が覚めたのはいつぶりだろう。
まだ外は暗い。
窓越しに空を見てるとなぜかなまえ先輩を思い出した。

「赤也君っ!頑張って!」


今までの笑顔は嘘だったのかよ。


「ちくしょうっ…」


最近先輩は俺の名前を呼んでくれない。
それに虚しくなってる自分がいる。
俺は結局どう思ってるんだ?

わからない。
わからない。


俺は集合時間より大分早く家を出た。
自転車に跨り頭の中の邪念を消すため、こいで、こいで。


そんなだからかやっぱりいつもより早く学校に着いて。
まだ、誰もいないだろうなと思い、校門の前に立ってると中から人の声が聞こえた。


「合宿、行くんですか?」

麻原の声だ。

「……行かなきゃ。私、マネージャーだから」

「…っ……」
先輩また麻原のことっ…

けど、体がその場から動かない。
息をひそめてそのまま会話を聞く。
壁越しに二人の会話は丸聞こえだ。


「幸村先輩が欲しいんです」
「…………精市を?」
「はい、あたし幸村先輩が好きなんです。なのに……幸村先輩はあんたなんかと付き合ってる」
「………」
「早く幸村先輩にも嫌われればいいのに…、どうすれば嫌ってくれるんだろ?」


嫌われればいいのに?
この会話を聞く限りでは明らかに加害者は麻原だ。



カッ、カッと足音が遠のいていった。


嫌われればいいのに、って、
なまえ先輩が麻原を虐めてたんじゃないのか?

騙されてたのか?
麻原に騙されて俺は大好きななまえ先輩を殴ったり蹴ったりしてたのか?



「……怖い……怖いよ………」



なまえ先輩の消え入りそうな声が聞こえる。
この静かな時間帯じゃなかったら聞こえなかっただろう。
今すぐ校門を越えてなまえ先輩を助けたかった。


けどそれを遮るようにして俺の肩に置かれた誰かの手。


「離せよっ……………!」


俺を止めたのはよく知る人物。


「…………柳先輩、」


俺はそのまま柳先輩に手を引かれて学校から少し離れたところまで連れて行かれた。

「柳先輩っ、離して下さいっ!」

俺は柳先輩に掴まれていた手を無理やり離す。

「……赤也、今はその時ではない」
「…なんでッスか!!柳先輩も今の会話聞いてたんでしょ?なまえ先輩は麻原に陥れられてんたんですよ!…、」
「あぁ、気づいていた……」
「…っ!じゃあなんでっ!!」



「……証拠がなかったんだ……」
「……証拠?」
「麻原がなまえを陥れたという証拠だ」
「じゃあ、今はあるんスか?」

そう問いかけると柳先輩はボイスレコーダーを取り出した。


「先ほどの会話を録音した」
「じゃあっ「まだだ」……え……?」
「これだけじゃ、作っただの言われるだろう。まだ完全に麻原を犯人だといえる証拠ではない。」

柳先輩はいたって冷静だ。

「……そんなの待てません……」
「赤也……」
「今までの償いとかもありますけど……俺はなまえ先輩を守る」





「あれ?赤也と柳?ってか赤也今日来んの早ぇな。雨でも降んのかな」
「……っ……」

俺たちは最低な事をしたんだ。


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