「大事な話があるから聞いて欲しい」
高1で初めて同じクラスになり、いつの間にか目でおうようになって、隣の席になって、精市から告白されて、付き合って。
そんな日から何年たっただろうか?
気づけば私達はいい年した大人。
私も精市も社会人だ。
日曜日。
精市にデートに誘われた。
デートくらいいつもどおりのことかもしれないが、今日は懐かしい場所巡りをしている。
昔に浸りたいんだろうか。
首をかしげながらも私の手を引く精市についていく。
何やら楽しそうな鼻歌を歌っている彼はどうやらご機嫌の様子。
もう何年も一緒にいるから分かってしまう彼の癖。
「うわぁ!!!久しぶりだー!!!」
日も落ちかけている時間帯に精市が車を止めたのは高校からすぐの海だった。
ここの海岸にはしばらく来ていない。
波の音がとっても心地いい。
「少し歩かない?」
そう尋ねた精市の手を取りもう片方の手で靴を持ち砂浜を歩いた。
「なんか学生時代みたい。すごい懐かしい。」
「あの頃からずっと君は俺の隣にいるんだよなぁ…」
「私ってほんと一途」
「俺の台詞でもあるから」
乾いた砂の上に座り沈みそうな夕日を眺める。
これも学生時代にした。
この前みたいな話なのにもう何年も前なんだよなぁ。
「ねぇ」
「なに?」
「大事な話があるから聞いて欲しい」
ふと真剣な顔になった精市に驚きながら「どうぞ」と続きを求める。
「俺さ君に出会えて本当によかった。君に出会えたことが俺の人生で最大の幸運かも」
「ふふっ、ありがとう」
「そんな君だからこれからもそばにいたい、って思えるんだ」
「…うん」
「だからね、」
夕日の光が精市の顔に当たってとても綺麗だと思った。
「俺と結婚しよう」
彼の顔がふっ、と微笑んだ。
あぁ、私はこの顔も知ってますとも。
このすごく優しそうな顔。
少し目を細めて歯を見せずに笑うこの顔。
私がいつも近くで見てきました。
「…うっ…」
「どうしたの」
嬉し涙が止まらない。
「どうしよう精市…っ、嬉しすぎるんだけど…」
精市はもう一度笑うと私の涙を拭ってくれた。
何度も何度も。私の涙が止まるまで。
こうやって精市の前でなく度に精市の手にお世話になってます。
「返事、聞かせてもらってもいい?」
そうやってまた優しく尋ねるものだから、止まりかけてた嬉し涙もまた溢れそうになってきて。
そんなの返事なんてわかりきってるくせに。
「精市…」
「ん?」
「私精市がすごく好きなの。これ以上ないくらいすごく、すごく。だから返事なんて決まってるよ」
小さく息を吸うと冷たい空気もともに入ってきたけど気にならなかった。
他のことなんて考えられないくらい頭がいっぱいで。
この言葉は精市がしてくれた告白の返事より重みのある言葉なんだろうな、くらいのことは考えてたかも。
「精市のお嫁さんにしてください」
そのワンフレーズ。
私の気持ちのすべてを詰め込んで。
できるだけ口角をあげる。
だってこの返事は最高の笑顔で返したいから。
「絶対幸せにするから」
精市もそう言って私を抱きしめてくれた。
「あーどーしよう。俺幸せすぎてどうにかなりそう」
「結論なんてわかってたくせに」
「わかる?」なんて言って小さく笑う精市。
そして彼はポッケから小さな箱を取り出した。
「やっぱり形って大事だと思うんだ」
その箱を開けるととても可愛らしい指輪が入ってた。
「プレゼント」
それを私の指にはめてくれた。
私の指にサイズはぴったり。
「なんでこんなにも私の趣味わかるかなぁ」
「何年一緒にいると思ってんだよ」
幸村からプロポーズされる
(一生大事にする)
(絶対離さない)
(だから俺の一番近い存在になって))