no game | ナノ

「私の勝ちです」
 最後の一枚を台札の上に置く。アルファさんの残った場札は二枚私のカードがなければ、意味のないものだった。跳ね上がりたいほどの喜びを抑え、わざとらしく考え込むように腕を組んだ。
「うーん、罰ゲームは」
 そんなものはなかっただろうと言いたげな視線は無視し、罰ゲームを考える。勝ったものが負けたものへ罰ゲームを決める制度がなかったわけではない。アルファさんの連勝でアルファさん自身がそれを忘れてしまっただけだ。
「私の言葉に全てイエスノーで答えるのは、どうですか?」
「No」
「もう罰ゲームを始めるなんて、アルファさんったらやる気まんまんですね!」
 にっこりと笑顔で言う。アルファさんの顔からは、不満なのか呆れているのか読みとることはできなかったが、気にせずゲームを進める。
 数個の質問を終え、アルファさんが全てノーとしか答えないことに気づいた。
「私のこと嫌いですか?」
「No」
「じゃあ、好きですか?」
「No」
 ぷくりと頬を膨らまし不満を表す。これぐらいのことでアルファの表情が変わることはないと分かっていたが、文句を言わずにはいられなかった。
「つまんないですう。アルファさんもう止めませんか?」
「No」
 きっぱりと言われた言葉に、爪を噛む。罰ゲームを考えたのは自分だが、これほどつまらないものだとは思わなかった。
「強情な人! ゲームに負けたことがそんなに悔しかったんですかあ?」
「……No」
 返事に僅かな間があったことを聞き逃しはしない。
「悔しかったんですねー」
「No」
 今度ははっきりと言い切られるが、それを信じることはしない。
 普段ただでさえ言葉数の少ないアルファさんの言葉数を更にイエスとノーとだけに限ると会話が成り立つか疑問に思い、この罰ゲームを考えついた。面白いことばかりではなかったが、なかなか満足のいくものだった。
 最後に私のこと嫌いですかと尋ねる。
「No」
 実際、この言葉さえ聞ければ満足なのだ。
「アルファさん今度は何しますか?」
「スピード」
「……やっぱり、悔しかったんですね」
「No」
2012/07/14
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