めぐまれたおしまい | ナノ

父と母へのお土産が入った袋を下げ、店を出た。かさりと安っぽい音が耳に響く。フィリップからジャパンエリアに行くならジャパンの食材を買ってきて欲しいと頼まれたことを思い出し、周りを見渡した。たくさんの店が並び、どこにジャパンの食材が売っているのか分からなかった。
「木暮くーん待ちなさーい!」
「ん?」
目の前を小さな子供が駆けていく。その後を黄緑のジャージを着た女性が駆けていった。あれは確か、イナズマジャパンのマネジャー。大股で走り大声を上げる姿は、パーティー会場と変わらず淑女にあるまじき姿だった。
「はしたない…が、」
彼女らしい。ふっと笑みを零す自分に驚く。
「私は何をっ!」
「デービッド、バッキンガムさん?」
いつの間にか目の前に来ていた彼女が不思議そうに声をかけてきた。混乱する頭には、対処しきれない状況だ。何と応えればいいのか分からず、どうして私の名をと下らない質問をすると戦う相手のことを調べるのはマネジャーの役目ですから、それにデービッドさんの姿は目立ちますからと彼女は丁寧に答えてくれた。
「そうか」
「おほほほ」
何を思ったのか一歩二歩と下がる彼女の腕を慌てて掴む。きゃと彼女の驚く声を聞きまた慌てて腕を離すと、がちゃんと嫌な音がした。
「あ」
下を見ると父へのお土産に買った湯のみが割れていた。
「す、すみません!」
「いや、私こそすまない」
箱入りのものを買うべきだったと後悔する。袋の中を見ると割れた湯のみと母へのお土産の扇子が重なり、悲惨な状況だった。
「買い直しか…」
「あのデービッドさん」
はっと声をかけられ、気付く。いつの間にか目の前のことに集中し、彼女を無視していた。
「音無、春奈さん」
「はい」
「良いお土産屋を知らないか?」
「知ってます!」
よかったと安堵の息を吐く。ついでにジャパンの食材が売っている場所を尋ねると一緒に行きましょうと彼女が笑った。
2011/03/31
めぐまれたおしまい
title:臍
plan:処女

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -