君の願いは僕が叶えよう | ナノ

最後に写真を数枚撮り、取材が終了した。
「ありがとう」
「どういたしまして。可愛く撮れたかしら?」
「モールさんほどじゃないけど、可愛く撮れたと思うよ」
「記者さんも大変ね」
何と答えていいのか分からず、苦笑いを返す。ランピー編集長が今朝の会議中にいきなり若い子の意見が大切だと言い出したときはどうなるかと思ったが、今は感謝していた。
「ギグルス君」
「あ!」
「え?」
「今彼に呼ばれたみたいだったわ」
「かれ?」
「ねえもう一度呼んで!」
彼女の勢いに押され頷く。もう一度、ギグルス君と名前を呼ぶと彼女は嬉しそうに笑った。
「やっぱり似てるわ」
「誰にだい?」
「私の大好きなヒーローさんに!」
「そう、か」
何とも言えない気分になり歯切れが悪くなる。ヒーローさんと心の中で呟いてみると馬鹿らしくなり、自嘲的に笑った。
「スプレンディドさん!」
急に名前が呼ばれ、眼鏡を取られ驚く。直ぐに顔を隠し、手の下から眼鏡の位置を確認した。
「え、あ、見えない…ギグルス君、眼鏡を返してくれ!」
顔を隠しながら、手を動かしながら慌てるふりをする。眼鏡が伊達だと知られるのも素顔を見られるのも、まずかった。
「うーん顔は…ちょっと手が邪魔ね」
手を退かそうとする彼女の腕を掴む。思ったよりも距離が近い。目が合い、慌てて腕を離した。
「すまないっ」
「私もごめんなさいっ…め、眼鏡返すわ」
「あ、ああ」
返された眼鏡をかける。安心して息を吐くと、彼女がじっとこちらを見ていることに気付いた。
「どうかしたのかい?」
「…やっぱり似てるのは声だけね」
苦笑し、最後にもう一度だけ名前呼んでくれる?という彼女の願いに頷いた。
「ギグルス君」
「ありがとう、スプレンディドさん」
2011/02/01
君の願いは僕が叶えよう
plan:1000hit感謝企画

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