ららら、ら | ナノ

大きな音が化学室に響く。試験管を割ってしまった。頭が真っ白になり、どうしていいのか分からず、おろおろとしていると後ろから右腕を掴まれた。
「動くな」
「フリッピー先生」
血の気が下がり、鼓動が速くなる。違う、フリッピー先生じゃない。目が雰囲気が違う。じゃあ目の前の先生は誰だ。頭の中で自問自答してる間、先生は何も言わずただ見下ろしていた。俯き、スカートを握り締める。足下にガラス、右腕に先生の手、謝罪や恐怖の気持ちが合わさって一杯になり、涙が溢れた。
「…自分が泣かせたのか」
首を横に振る。そうです先生のせいです離して下さいと言えるわけもなく、泣きながら謝った。
「謝るな」
「ごめ、んなさい」
舌打ちする音が聞こえる。反射的に謝りそうになり慌てて口を押さえた。
「甘いものは好きか?」
「え?」
「好きか、と聞いている」
「す、好きです」
「やる」
チョコチップクッキーが白衣のポケットから出される。戸惑い首を振ると、無理やり手に握らされた。
「だから泣き止め」
「へ?」
「何だその間抜けな顔は」
ようやく右腕が放されたと思うと、いきなり両目を擦られた。
「もう泣いてないな」
「は、い」
「片付ける、どけ」
「え、あ、僕も手伝います」
「…ほうき、ちりとり」
邪魔だと一蹴されて終わりだと思っていたから、指示があったことに驚きながら頷いた。
無言の掃除を終え、先程貰ったクッキーを握り締める。血が頬に集まり、鼓動が速い。勇気を出して、先生と声をかけた。
「何だ」
「僕、一人じゃ食べ切れません。あのっ、だから、い、一緒に食べませんか?…チョコチップクッキー」
「解った」
「いいんですか…?」
「構わない」
「ありがとうございます」
「礼を言われることか?」
「嬉しかった、から」
「そうか…どういたしまして」
2011/01/01
ららら、ら
plan:1000hit感謝企画

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