くらくらくら、り | ナノ

買い物は楽しい。一人で何件も店を回り、スカートを一着ブーツを一足、後は細々した雑貨を数点買った。いいものが買えたと、満足げに笑う。最後の店を出た瞬間、この街一番の紳士が目に入り名前を呼び駆け寄った。
「モールさん!」
「ギグルスさん?」
「こんにちは」
「こんにちは。お一人ですか?」
「そうなの!モールさん聞いてくれる?」
「はい」
「本当はね、今日ペチュニアと一緒のはずだったんだけど急にハンディが仕事休みになったからデートってことで断られて、私も久々のデートって知ってるから文句は言わなかったけどハンディもタイミングが悪いと思わない?フレイキーを誘ってみたんだけど洋服に興味ないからって断られて…もっとオシャレすればいいのに…今度リボンでも贈ろうかしら?ラミーはお茶会があるからって断られて、カドルスは疲れるから嫌だってって!男の人ってどうしてそうなのかしら。荷物持ちにはいいけど、あんなつまんない顔されたら、こっちまでつまんなくなっちゃうわ。モールさんもそう思わない?あ、モールさんも男の人だったわね。女の人の買い物に付き合うのはつまらない?そういえばモールさん、新しいマニキュアを買ったの!」
「そうなんですか」
「何色だと思う?」
にっこり笑い尋ねるとモールさんは一度サングラスを上げてから答えた。
「桃色ですか?」
「ピンク!いつもはそうなんだけど今日はハズレよ」
「青色?」
「違うわ」
「赤色?」
「ううん」
三回目の回答が終わり、モールさんは考えるように黙り込んでしまった。沈黙の時間が焦れったく、思わず答えを言ってしまいそうになる。
「水色?」
「違うわ!」
「答えを教えてもらってもいいですか?」
「正解は紫色!正確にはモーズっていう色らしいけど」
「…珍しいですね」
「そう?似合わない?」
「いえ、きっと似合ってますよ」
「ありがとう!」
嬉しくなってくるりと回ってみる。今日、絶対着ていこうと決めていた薄ピンクのワンピースがふわりと揺れた。見えないモールさんから褒められて嬉しいなんておかしな話だと一人で笑う。ギグルスさんと名前を呼ばれ、モールさんの目を見つめた。
「なあに?」
「私は貴女との買い物がつまらないと思ったことは一度もありません」
驚きで目が丸くなる。モールさんは時々水のようにさらりと恥ずかしい言葉を吐く。頬が熱いと感じながら、そうと小さな声で返事すると、モールさんは満足げに微笑んでいた。
2010/11/16
くらくらくら、り

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