痛み隠し | ナノ

ちゅんちゅんと鳥が鳴いている。植物は朝露に濡れきらきらと輝いていた。今日は良いダンスが踊れそうだ。一周くるりと回ると、青髪の少女を見つけた。
「ペチュニア」
「ディスコ」
近づき、手を差し出す。軽く払われたが、これぐらいではへこたれない。にっこり笑いかけると怪訝な顔をされた。
「今日も君は素敵だね」
「そう、ありがと」
「どこかに出掛けるのかい?いつもよりオシャレだ!もしかして僕に会うために!」
「違うわ」
「冷たいなあ、ああもちろんクールな君も素敵だよ」
「そうね」
どこか切り返しにいつもの鋭さがない。体調でも悪いのかと不安になり、彼女を見つめると急に「あ!」と小さく声をあげ、微笑んだ。彼女の目線の先には仏頂面の青年が居た。どうやらデートが楽しみで心ここにあらずなだけだったようだ。
「ごめんなさいディスコ、用事ができたから」
「ああ、ごめんね!ペチュニア、今日の君は世界で一番可愛いよ」
白く美しい彼女の腕を手にとり、キスを落とした。「行ってらっしゃい」と笑い手を離すと、彼女は慣れた手つきでウェットティッシュで手を拭いた。過呼吸を起こされた昔に比べるとかなりの進歩だ。
「行ってくるわ」
彼女は軽やかに彼のもとに走っていく。まるでダンスを踊ってるようだ。タンタン、トンッ。今日はどんなダンスを踊ろうか。タンタン、トンッ。彼に、辿り着いた。
「あ…」
リズムが乱れ、ステップが乱れる。らしくないミスに、一人で笑った。
2010/11/01
痛み隠し

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