猫かぶりのキミへ | ナノ

 そんなに見つめないで

あれ?なんで続いてんの?
前回のあの終わり方でよかったじゃん。
こういうのってあれでしょ、後日談とかやるんでしょ、会長とは別れたけど主人公は幸せに暮らしました。みたいなパターンでしょ?
しかもまだ前回のシーンのままなんだけど。
数日後とかでチワワと戯れるオレとかさぁ激しく希望なんだけど、直後ってなに?
現在進行形でオレ皆から大注目浴びてるんだけど。(in食堂)

そんなに見つめないで


「っ、隊長!!」

それはもう時が止まったかのように静まり返った中で、オレしか動いてないんじゃないの?疑惑説が浮上していた中で。
人垣になっている生徒を押しのけてこちらに近づいてくるのは、副隊長だった。
そういえば、さっきオレさよなら宣言しちゃったもんね、親衛隊の隊長としての立場とか色々変わっちゃうよね?

「副隊長、ボク隊長辞めた方がいいかな?」
「な、なんでそんな・・・っ」

だって会長のコイビトじゃ無くなったし?
衝撃を受けたように目を見開いてる副隊長の後ろからは見覚えのある子達が続々と現れた。

「アユ隊長辞めないでくださいっ」
「辞める必要なんか、ないです!!」
「隊長が居なくなったら、僕達寂しいです」

えーなにこれハーレム?
うるうるのおめめがいくつもこちらを見つめてくるので一番近くの子の手を握る。

「寂しくなんかないよ。もし良かったら隊長じゃなくなったボクでも、今までみたいに君達とお茶会はしていきたいな。これからは親衛隊としてではなくて、友達、として。・・・ね?」

こんなハーレム手に入れるチャンス誰が見逃せるものか!!ええい、このかわいい生き物はオレのものだ!!
ぴるぴる震える子達に首を傾げてお願いをしてみると、皆そろって首を縦に振った。

「っ辞めるなんて認めませんよ!!・・・僕は貴方の下に就く為に副隊長になったんだ」
「副隊長・・・」

こちらを睨むような強い視線ではあるけど、うっすら頬が紅潮して涙まで滲んでる副隊長。
え?ナニコレ、実はツンデレだったの?
副隊長ってばオレ大好きって事?

「ボクも副隊長大好きだよ・・・え、ぅわっ」

ぐいーっと、ね。

ちょー可愛いんだけどこの子、とか思いつつ副隊長を抱きしめると、いつもなら「バカな事してないで仕事してください」とか言って離れちゃうのに、大人しく腕の中に収まってる。
ちょーかわいーんだけどー!!なんて叫びたい程の感動を胸に更に抱きこもうとしたら、何故か後ろから襟首を引っ張られて体が仰け反った。
一瞬倒れるかと思って副隊長の体を放せば、逞しい腕に包まれる。
不本意な事に嗅ぎ慣れた香りに犯人の目星がついて、至福の時を邪魔された事で眉間に皺が寄るけど構わずそのまま見上げる。(見上げる程の身長差が悔しいのでわざと足を踏んだ)

「・・・なんですか、会長」

そう、未だにオレを放さない腕の持ち主は、先程別れを告げたハズの会長で、苛立ちの表情を隠そうともせずに見てくる。
え、なに、まだなんか話でもあんの?

「これはお前にやったものだ。他人に簡単に明け渡してんじゃねーよ」

そう言ってさっきモジャッティに渡したはずのカードが戻って来た。
ナ ゼ

「えーでもボクにはもう必要ないものですし、処分するのもめんどk・・・間違って誰かの手に渡って悪用されたら困るのは会長サマじゃないですか」
「処分すんな、持っとけよ!」
「使わないですもん」
「使えよバカ」
「“もう二度と部屋に来なくていい、お別れだ”って言ったのは会長サマでしょ。それに特別フロアのスペアキー申請するのも二度手間でしょうから、これそのまま渡せばいいじゃないですか」
「何勝手に誇張してんだよ、“しばらく”って言っただろ」

なにこの人、めんどくさいんですけどー。
誰か助けてくんない?って周りを見渡したら、皆ポカ―ンと口を開いてこっち見てた。
まぁちょっと驚くよねー、あれだけいつもオレ様みたいな会長が、今は駄々っ子のように口を尖らせて拗ねてるんだもんね。

「しばらくってなんですか、永遠にもうおさらばですよ。会長はそこのもじゃt・・・えっと、転入生の、」
「瀬尾陸だぞ!!」

思わず脳内の呼び名が出そうだったので、言い直そうと思ったけど名前忘れちゃったよ、と困ったようにモジャッティを見たら、オレの意図がわかったのか名乗ってくれた。
うん瀬尾君、君の名前は一生忘れないよ。

「そう、瀬尾くん。が好きなんでしょう?彼も満更でもなさそうですし、新たな恋人ですね、おめでとうございます。ってことで元彼とはちゃんと縁を切るのが筋じゃないですか。ハイさよなら」
「なんで別れ話になってんだよ」
「なんでもなにも、だから瀬尾くんの事が好きになったんですよね。二股かけるような情けない男に成り下がるおつもりですか。・・・・・・チョン切りますよ」

いい加減面倒くさくなってきて(あ、元からめんどかったわ)、イライラをいつもよりトーン抑えた声に籠めてみたら、何故か周囲の見学者達の中に咄嗟に股間を押さえた奴が数人。
おい、どうやらこの学園には二股男が複数存在するようだぞ。
サーッと血の気が下がってる奴らに呆れた視線が集まっているのを眺めていたら、まわされている腕に更に力が入ってきた。

「好き、にはなってねーよ」
「ちゅーしてたじゃないですか。苦しいんで放してくれません?」
「してない、あんなのキスじゃねえ。別れるとかアホな事ぬかすの辞めねえ限り放さねー」
「・・・・・・・・」

・・・ねぇ、なんか予定から大幅にズレてるんだけど。
オレの素晴らしい頭脳が弾きだした計算だと、会長と別れる事になってオレ離脱。そしてウェルカムランチタイム。
多少は会長と別れる事で周りが騒がしくなる事もあるだろうけど、今回のは同情されてそのままオレに非難が集まることなく穏便に事が進むと思ってたんだけど。
なんで、まだオレ此処に居るわけ?そしてなんで会長はオレを引き留めて、「捨てないでー」的な言動してんの?(高圧的な言い方がムカついたので脳内変換は恥ずかしい方向でしてやりましたけど、なにか?)

「あゆむ・・・あゆ、いいか、別れるなんて、許さねぇ。俺のこの腕におさまるのは、お前だけだ」

ハスキーボイスをここで行使ですか、会長。震える声でちょっと弱った感じも演出するなんて、そんなんで同情が買えるとでも?(残念だけど今此処に居る奴の多くは、既にオレへ同情してるからね。言ってみればオレの味方してるからね)
イケメンだからこそ許される俺様セリフですね、そんな手に引っ掛かりはしないけどね!

・・・って、え?なんで皆ちょっと絆されてる空気だしてんの?!
「会長様・・・やっぱりアユ様に一途なんですね、素敵」とか言ってる場合じゃないよ!
何処が一途?さっきコイツそこのモジャッティと接吻してたんですけど。
おいこらモジャッティ、お前もなんか言ってやれ!
さっきから放置され過ぎだろ、ちょっとここで「酷い!俺とのさっきの熱烈なキスはなんだったんだよ、浮気?」とか言って会長責めて。
とりあえずなんでもいいから会長責めまくって、お願い。
そう思って向けた視線の先で「よく分かんねーけど、喧嘩は良くねーから仲直りしろよ」とか、腕組んで言ってる場合かぁあああ!!!

「あゆ・・・・お前だけだ」

――キャー、やっぱり会長様はアユ様だけを想ってらっしゃるんだよ
――よかったぁ、お2人が別れるなんてありえないもんねっ
――浮気攻×チワワ受かと思ったら、溺愛攻?それとも執着攻?どっちでも萌えー
――アユ様良かったですね

「え、・・・ちょ、 と」

オレまだなんも言ってないよ?!

なんで祝福ムードにシフトチェンジしてんの?!

周囲の変わり身の早さについていけないオレが取り残される中、「あゆ、・・・・今夜待ってるからな」とか耳元で囁かれて。
それを聞いた周りがまた色めき立って。
そしてオレは・・・こんな空気で別れを切りだしたら完璧反感買うじゃん、って優秀なmy頭脳は計算しちゃったせいで、渋々流される事にした。

「オレのフリーダムな放課後・・・」

・・・・は、諦めるから、とりあえずご飯食べてもいいですか。



to be continued...?


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