猫かぶりのキミへ | ナノ

 赤い舌には甘い御褒美を・・・

「おい」

皆さん、こんばんはアナタのあーゆんです。
素敵なレディ達、是非今度ボクと結婚を前提にしたお付き合いでもはじめませんか、切実に。
165cmの男は守備範囲外でしょうか?
それなら、180cm越え・眉目秀麗・文武両道・生徒会長を務める程度に人望ある御曹司はどうでしょうか。(若干好きなものがひよこのキャラクターだったりしますが)
今なら一世代昔の少女漫画に出てくるような瓶底眼鏡のもじゃってぃもおまけでつけるヨ♪

「・・・おい」

ダメなら今すぐオレにむっきむきの筋肉を与えてくれない?
これ、マジで切実だから。
ローテーブルとセットのソファに座るオレの隣に腰を下ろして、体と言わず顔ごとこちらに迫ってくるアホ野郎の顔を押し退け続けるのも無理があるわけ。
もうオレの腕プルップルしてるから。
利き腕じゃない左だからってこれはちょっと男として情けないよね。
だから今スグ!腕力と握力をおくれ!
アイアンクローしてるけどそのまま頭蓋骨粉砕できるくらいあると嬉しいナ。
無理ならせめて軽々と押し退ける力でもいいから。

「おいコラ何故拒否るんだ、あゆむ」

え?今の状況?
そうだね簡単に説明すると、「結局アツアツのラザニアを食べれなかったオレは会長と別れることにも失敗して魂抜けた状態で午後の授業を乗り切ったけど何故か廊下で待機してた会長に拉致られて部屋まで強制連行されて何故か高級イタリアンフルコースを御馳走され悪くないと舌鼓を打ちつつ会長の家お抱えのシェフが腕を揮ったデザートの数々を只今ソファでまったりと堪能していると何故か会長が隣に座ってあまつさえ顔を近づけてきたので身の危険を感じたオレは咄嗟に防御した」かな。
え?簡単じゃない?長すぎ?もっと詰めろ?3行以内に?
今のオレの苦労を語るには、3行じゃ足りないから。
ついでに言うと、抱きしめようと伸びてきた腕は早々に叩き落してるけど、これ完全にオレ目の前のデザート達と向き合えないからね。
全神経を左腕に集中してるから。
畜生これなら、腕立て伏せでもやっておくんだった。
決めた、これから毎日100回するわオレ。
未来のムキムキマッチョ計画を脳内で練るオレだが、それでは現状改善には繋がらない。

「・・・なんで顔近いんですか」
「んなの決まってるだろ、キスしてぇんだよ」
「オレは嫌です」
「なっ!!!・・・え、 は、?ちょ、」

きっぱりさっぱりはっきり断れば、意外と会長が動揺した。
こちらへと迫るのも忘れて焦る会長に、痺れる腕から力を抜いて下ろす。
フォークを唇に添えて目を伏せて、悲壮感を演出する。
目の前で美味しそうな香りを放つスイーツの山が食べれない悲しさが、オレの演技に拍車をかける。

「だって、会長お昼に・・・転入生としてたじゃないですか」
「あれは、」
「他の子と口付けた唇で、オレに触ってほしく、ないです」
「・・・っ!!!」

あ、なんかズキューゥゥゥンとか聞こえてきそうなくらい会長がすっげ耐えてる表情してる。
やっべやりすぎた。これあれだ、もうちょっとで会長のメーター振りきっちゃって朝チュンフラグ立つところだよ。

「せめて・・・歯、磨いてきてください」
「!!3分で終わらせる!!」
「5分はしてくださいね、それから口内洗浄もお願いします」
「任せろ」

素早い動作で洗面所に向かう背を見つめて、死神ノートを手に入れた天才高校生ばりに心中でお決まりのセリフを言ったオレは、これでゆっくりスイーツを食べれることにほっこりと表情を緩ませた。
だいたいお詫びのつもりか何か知らないが、オレの為にわざわざ生徒会の仕事で忙しい合間をぬって実家に連絡をとってまでディナーやスイーツを用意したんなら、最後まで相手が受け取るのを待つくらいしてもいいってのに。
並べられた数々の、どれもオレの好きな種類ばかりで埋められたそれらに気づきつつ、何も言わないオレもオレだけど。




「待たせたな、あゆむ!さぁ俺と熱いキスを、」
「折角のレモンタルトが歯磨き粉の味と混ざっちゃうのはヤなので、拒否します」

もちろんここまで計算済みだから。
え?策士だって?当たり前だろ。


to be continued...?


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