猫かぶりのキミへ | ナノ

 弱点は足とそれから…(前編)

 弁慶の泣き所という言葉を知ってる?
向こう脛のことなんだけど、武蔵坊弁慶ほどの豪傑でも蹴られれば痛くて泣くことから、急所や弱点の例えとして用いられるようになったらしいよ。
以上、あゆむのプチ講座でした。次回は「ラザニアは何故あんなにオレを惹きつけてやまないのか特集」をするよ乞うご期待☆


…じゃ、ねーよ!!!
つまりオレが言いたいのは、どんな奴にも弱点はあるってことであって。
弱冠身長は理想より足りないけど、今の容姿でも十分チワワと戯れること可能なくらいには整っていて、秀才とまではいかないけど人並みには勉強もできて、運動もまぁ苦手じゃないと言えるくらいにはできて、猫被ってる程にイイ性格をしている完璧なオレだってね、弱みはあるわけなんですよ。
なんですよ、って…ダメだ、精神的余裕がなくてキャラが安定しねー。

そう、つまりオレは只今大変混乱してるわけなのであったのであった。


弱点は足とそれから…



 災難は突然降りかかる。
警戒していても無防備に過ごしていても、それは平等に降りかかる。
でも、今回の災難は避けられたはずだった。
なのに今こんな目に遭ってるのは一重にオレに慎重さが足りなかった為だと言い切れる。
後悔しても時すでに遅し。

「あのさー…すごいシリアスなモノローグのところ悪いんだけど、」

胡乱気な感じの声にオレの思考はぶったぎられた。
悪いけど、今のオレにあんたの相手をする余裕はないんだよね。

「もうちょっと恥じらいとかさぁ、イイ所にお邪魔しちゃってゴメンナサイとかいう?態度はないわけ?」

そう言ってグチュリと生々しい音をさせながらブツを引き抜いた男は、ダダ漏れる色気を隠そうともしないでこちらを見てくる。
「情緒というものがたいちょーさんにはないわけ?」とか失礼極まりないことを言ってくるその男こそ、今の今まで睦み合ってた相手に対する配慮はないの?と言い返したいよね。
見悶えながらも名残惜しそうに抜かれてしまったイチモツを見やる、男の相手をしていたいまだ呼吸の整わない人物は突然の乱入者に対して文句を言ってもよさそうなのに、こちらを見て更にその可愛い顔を真っ赤に染め上げ乱れた制服を掻き合わせ「あ、アユ様…?!」と目を白黒させた後に「アユ様にこんな所見られるなんて恥ずかしいです」とそれはそれは可愛らしく恥じらいながら止める間もなくこの場を去って行った。
…めんこい。

「あーぁ、行っちゃったー。どーしてくれんのさぁ」

責める口調とは裏腹に、たいして未練を感じさせない動作で自身の服を整える男に一言物申したい。

「シャツのボタン閉める前に、その臨戦態勢解けないナニを仕舞うのが先でしょ!!」
「んー?あわよくばたいちょーさんに鎮めてもらいたいなーという下心があったりなかったり?」
「…別の意味で沈めてやろーか、ぁあん?」
「こっわーい、冗談だよぉ。ねえそれよりさっきから思ってたんだけどたいちょーさんいつもとなんかキャラ違くね?」
「ソンナコトナイデスゥーきゃるるん」
「ふーん?まぁいいや、あ、飴いる?イチゴとパイナップルとレモンあるよ」

不思議そうにこちらを見遣りながらようやく身なりを整えた男は、生徒会会計だよ。(名前は…忘れた)
会えば何故かお菓子をくれる会計は節操無しという程でもないが、性事情は割と奔放なようで特定の何人かと関係を持ってるエロ会計。
ちょっと垂れ目な甘いマスクでチワワをメロメロにしてはウェルカム状態で相手に困らない、まさに男の敵。いやチワワ好きな全オレの敵なわけで。
オレの理想とする長身を持つにっくき会計のチワワとにゃんにゃんしている場面に遭遇してしまったのは、実に不愉快極まりないね。
できることならさっさとこの場から去ってしまいたい。
が、しかし。

「ね、それよりいつまでそこに座ってるのさ。たいちょーさんが相手してくれないんなら、俺そろそろ帰りたいんだけど。あ、それともたいちょーさん俺と親睦深めたいの?」
「んなわけあるか」
「えー、ちょーぐっさり」

帰り支度を整えても会計が出ていかないのは、オレが出口を塞いでいるからだったりする。
そしていまだにドアの前から一歩も動こうとしない事こそ、さっきまで言ってた災難が原因なのだ。
そう、あれは数時間前の出来事が発端…

「え、このまま回想に入るの?それ長い?俺腹減ったー」

飴でも舐めながら聞きやがらないと、いまだに元気な息子もいじゃうぞ☆きゃるるん



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