それは至上の | ナノ

 3

 アツイ イタイ 痛い
 クルシイ クルシイ 体が、重い
 あぁ…捻じ切れ、そう


 目覚めた時は散々な状況だった。
体は重くて腕すら上がらず、翼はところどころ折れて仕舞うこともできなかった。
声も出ないくらい消費しているのは、力を使い過ぎた他に“穢れ”が体の中に溜まっているからだろうという事までは推察できたが、それ以上は頭が働かない。
それでも目覚めた時から探していた姿が見当たらない事が不安で、涙ぐみながらも介抱してくれるショーンにやっとの思いで聞いて無事を知れば、安堵からか再び意識が混濁する。
そして短い時間目覚めてはまた眠って、そんな日々を繰り返した。
羽が仕舞えないからうつ伏せに寝るしかなくて、無残な羽の有様を誰にも見せたくなくてショーンと医師以外部屋に入るのを禁止させた。

「クローディア様!!まだ起き上がってはなりません、お医者様の許可はあと1週間程おりないようですから」
「…自分の体の状態は、自分がよく知っています。それより、城の“穢れ”は?浄化、しないと」

まだ己に残る“穢れ”すら消し切れてないがそれでも城に蔓延れば一大事だ、と震える腕を支えに体を起こす。
崩れそうになるほど体が重い。吐息が熱い。
回復がいつもより遅い、と胸中で吐き捨てる。
駆け寄るショーンが細腕ながらもしっかり支えてくれたので、漸く久しぶりにベッドから体を起こすことができた。
しかし床に足をつけようとすると押し留めるようにショーンが肩に手を置いた。

「城の“穢れ”は魔術師達が対応しています。完全ではありませんが、今ではもう人に影響出ない程度にまで治まったとか。クローディア様は今は御身体の回復に努めてください」
「そう、でしたか」

胸を撫で下ろして、ショーンが柔らかいクッションをいくつも積み重ねてくれたので身を預ける。
息を吐く毎に体にかかる重力が重くなる気がする。
ぼんやりし始めた思考をなんとかクリアに保ちたくて、ショーンに話しかける。

「【歪み】は…あれから…、私が寝ている間、に、出現しました?」
「……はい、でもその、収束しました」

ずぶずぶとクッションに体が沈んでいくような感覚と戦いながら、何故か急にらしくなく歯切れ悪い回答をするショーン。
もう声を発するのもダルいので、じーと違和感の正体を見極めるように見つめた。

「と、とにかく!!今クローディア様が1番に気にすることはご自身の御身体の事ですから。貴方は…王を、この城を守ってくださいました。これ以上、御身を蔑ろにしないでください」

嘘の吐けない正直者で真っ直ぐな少年は、何やら隠しごとをしているらしい。
しかし今はそれを突き止める程の体力も無いようで、話を逸らしたショーンの声がだんだん遠くなっていく。

「体を張ってまで、守っ…ました。貴方は、…く の…守護神 誇り…す」

それはオレに話すというよりは、誰かに言い聞かせるような響きだなと眠りの淵で感じた。




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