はじめまして

「新人?」


突然そんなことを言われて俺は一体どうしたらいいのか。むしろあちらは俺にどんな反応を期待しているのだろうか。いや、期待する心なんて持ち合わせてなんていないってハナシか。
俺の返事に対して「そうだ」と頷いて見せたサイクス。それを聞いた機関のやつらは各々「えー」やら「すごーい」やら声を上げている。上げていないやつも数名いるが。


「入れ」


サイクスがそう言って首で入るようにおそらく新人に促した。
それはあまりに突然すぎて。俺たちはみんな反応が鈍くなってしまっていた。


「とうっ!」


おそらくそんなことを言ったと思う。謎の物体が廊下の奥の薄暗いところからなぜか飛び上がったかと思えば床にダイナミックにかつ大袈裟に転がり出し、流れるように片膝を立て俯いて固まった。そしてその物体は「ふふふ…」と漏らすような笑い声を出して肩を震わせる。突然かぶっていたフードらしきものを振り払うように頭を振るい上げ大声を上げて笑い出した。突然の出来事に新人と聞いてざわついていた機関のメンバー全員がぽかんと口を開け、その謎の物体をただ見つめている。
笑い声がぴたりと止んだ。そしてその謎の物体はゆっくりと立ち上がる。機関のメンバーが着ているコートを身にまとっている人物がだらりと腕を垂らしている。一体なんだこいつは。


「遥か向こう、彼方の大空より出でし漆黒の先導者深紅の双眸持ちて。今、天からの導きの下、我召喚されん…――」


だらりと力なく垂らしていた両腕を勢いよく上げた意味不明なことを言っているその人物を俺たちは変わらずただぽかんと既に眺めるという域で見ていた。


「我が名はオニキス!神に選ばれし者なり!」


流れる静寂。その人物は途端にそのまま固まってしまい、俺たちも同様にそのまま固まってしまった。
その人物は満足したように腕を下ろしてふう、とため息をつく。それから改めてといったように両腕を腰に当てて仁王立ちの格好になった。


「さて、冗談は置いといて。わたしの名前はオニキス!新しく機関のメンバーになりました!よろしくね!」


オニキスと名乗るその少女は一人一人近くにいた機関メンバーに笑顔で「よろしく」と言いながら握手をしていく。俺たちはみんな状況について行けずに無言で握手をされるか「あ、ああ…」とかそんな微妙な返事をして握手をされていた。
俺以外のメンバーと握手を終えて、とうとう俺の目の前に来たオニキスは満面の笑みで俺に手を差し出してきた。俺は理由はないがおずおずと手を出してみると強引にその手を掴まれる。


「よろしくね!」


他の奴らと同じような口調で、トーンで、笑顔で、オニキスはそう言った。

これがオニキスの出会いだとは言わずもがな。
この時の第一印象も、今の印象も、変わらず変な奴。それだけだった。


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