おはようございます

目が覚める。
ぼんやりとぼやけている視界に入ったのは妙に頬がこけている男性らしき人と肌の色が黒い男性だった。
誰だ、とそれを確かめようと両目を強くこすってみる。少しだけ視界がはっきりしてきた。でもその分体の重みが反比例のように襲い掛かってくる。頭もさっぱりしない。ぐちゃぐちゃして整理されていないようなそんな感覚だ。


「お前に名前をくれてやろう」


頬がこけた男性がそんなことを言った。
名前。自分には名前が無いのか。これから付けてもらえるのか。これから、自分は生きることになるのか。
肌の色が黒い男性が自分に掌を見せた。かと思えば、その掌を横にゆっくり薙いでいく。掌があったところには金色でふちどられたガラスのようなものが一つ、また一つと浮いているように見えた。それを一つ一つ見てみるとどうやら文字のようだ。その文字がふわふわと自分の前で見ろよと言わんばかりに浮いていた。
その文字が自分を中心に徐々に速度を上げて回っていく。ぐるぐる、ぐるぐる、ああ、目が回る。鬱陶しいなあ。そう考えているとぴたりと文字が止まる。文字の中に“X”という文字が、自らを主張するように大きくそこにあった。
息を吸った。空気ってこんな味なんだ。そんなことを思いながら目の前にある文字を見て肺にたまった空気を吐き出した。


「――オニキス」


「新しい君だ――」


こうしてわたしは生きることになったわけだけれども。
生まれてしまったばかりには生き抜いてやろう、と二人の男性に見られながらわたしはこみ上げてくる何かを堪えることができずに口元に笑みを浮かべたのだった。



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