直射日光、謝罪と痛み

闇の回廊を出てすぐボクに向けられたのは強烈な直射日光。目を細めながら腕で影を作ってから前を見てみる。大分目が慣れてきたようで、喉の痛みにゲホゴホと咳を漏らしながらも目の前のものを確認するべく腕を下ろした。

目の前には巨大な建物が。剣を掲げた人みたいな像が二体剣を交えていた。いかにもコロシアムとか闘技場のような建物にボクは立ち去ろうとため息を吐こうと息を吸いながら踵を返す。


「スペース!」


振り返ってそこにいた人と目と目が合ったまさにその瞬間に名前を呼ばれ、まさかの不意打ちに呼吸が乱されボクは咳き込む。元から喉が痛かったため、咳をする度喉がヒリヒリする。咳はもう止めてしまいたいが、どうにも止まらない。
背中を丸めて咳き込んでいるとボクの名前を読んだ人物が慌てながらボクのところまで駆け寄り、背中をさすってくれた。再度その人物を確認するために顔をほんの少し上げる。間違いない。


「アグ、ア…」


名前を口にすれば喉からは血のような味を感じて気持ちが悪くなった。ガラガラで濁点が付いたまま彼女の名前を呼べば、驚いたように目を見開く。


「喉が炎症を起こしているのかもしれないわね」


アクアは「ちょっと待ってて」と言ったので黙っていると、アクアはボクにケアルをかけてくれた。そういえばボクも回廊内でやろうと思っていたのに、忘れていたらしい。
もう喉の痛みはない。アクアの顔を見て、ハッと思い出す。ボクはアクアとヴェントゥスに謝ろうと思っていたんだった、と。今がチャンスかもしれない。
ボクが躊躇うように「あの」と言えば、アクアは「ん?」と微笑みながら首をかしげる。ボクはそのせいなのかはわからないがやけに緊張してしまい、俯いてしまう。


「ケアル、あ…ありがとう。レイディアントガーデンでは、…ごめん」


仲良しトリオに言うのはやはり恥ずかしいというか。ごもごもと言ってやるとアクアはしばらくぽかんとしてから吹き出したように笑う。どうせボクには合わないよ、といじける。


「良いのよ。スペースが素直じゃないのはわかってたから」


クスクスと女らしく笑うアクアにボクは思わず照れてしまい、フードを被ってしまいたい衝動に駆られた。みんな素直じゃない素直じゃないって失礼な。実際その通りなんだが。
兎にも角にも許してもらえたし、あとはヴェントゥスだけか。気が重いな、とぼんやり思いつつ仕方なく顔を上げる。


「ごめんね、スペース。私これから大会に行かなきゃ」


「大会?」


アクアは「そうよ」と言ってからボクの後ろを指差す。後ろにあるのは、いかにもコロシアムとか闘技場のような建物だった。やっぱり闘技場だったんだ、と思いながらアクアも参加するんだ、とも思ってアクアの方から闘技場へ体の向きを変える。


「テラが参加してるかもしれないから参加したのよ」


「テラが?」


頷いたアクアは笑みを絶やさずに「そろそろ行かないと」とボクの横をすり抜けていく。アクアは一度ボクの方を振り返ってから、片手を口許に近づけて一言。

またね、と。

その言葉が、少し痛かった。


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