誕生、操り糸操られ

ごく普通で散らかってもいない最低限の家具しか置いていない、シンプルな部屋。新たな命を腹に宿した女性が、一人その部屋のベッドで寝ていた。
その女性に近寄っていくのは二人の男。間違いない、間違えるはずもない。その二人は、ゼアノートとヴァニタスだった。


「都合の良い体よ。抜き取らせてもらう」


ゼアノートが握っているのは紛れもない、キーブレード。ベッドで幸せそうな夢を見ているのか口元には笑みを浮かべている女性へと歩み寄り、その女性の腹に垂直にキーブレードを向ける。キーブレードに光が集まり、その光が女性の腹目掛けて、否、腹の中の子へと向けて伸びた。女性の腹の中からは小さな黒い色をした玉がふわふわと浮かび、ベッドの横まで来たところで弾ける。弾けた光の中から出てきたのは、嘘だと思いたいほどにボクに似ていた。今と大して変わらず、虚ろな瞳でゼアノートを見るために目や顔を動かす。


「私が、おまえのマスターだ」


「マス、ター」


ゼアノートは上手くいったと言わんばかりに口許に笑みを彫り上げる。ボクは俯いてから、横で寝ている女性の方へ顔を動かす。ほんの少し眺めて視線をそらすと、ヴァニタスに腕を掴まれた。ボクの腕を掴んだ手は、今と変わらず温かいままで。
ゼアノートが開いた闇の回廊まで人形のように引っ張られて、ボクの体は闇の回廊に消える。
この部屋に残ったのは女性と、あともう一人のみ。


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