発表、人気者の秘訣

すると、急に赤色の帽子を被った子が吹き出した。釣られるように吹き出す二人に、ボクはただ呆然。何かおかしいことを言っただろうか。


「面白いね、えっと…」


「スペース」


「スペースって優しくていい人だね!」


ドキリと心臓が跳ねる。優しくていい人、だなんて。

(そんなつもりなかったんだけど…)

緑の帽子を被った子がチョコレートアイスを持ってきてくれて、慣れない“ありがとう”を言うべきか迷った。だが、ボクをじっと見つめる緑の帽子の子に、ボクが折れる。ため息つきたい気持ちを必死に堪えながら、アイスを受け取ったときに呟くような「ありがとう」を添えてやった。緑の帽子の子は笑いながら「どういたしまして」と言う。照れ臭くなったのと笑顔を直視できないので「ふん」と鼻を鳴らして顔を背けながらアイスを舐める。


「スペースって素直じゃないんだね!気に入ったよ!」


素直じゃない、と言われて頭を過ったのは彼だった。こんなところも似ていると言うのだろうか。


「僕、スペースに投票するよ」


「投票?」


「ミリオンドリーム・アワードというドリーム・フェスティバルの催しの一つで、この町一番の人気者を投票で決めるというものです」


向こうから歩いてきたミニーが説明してくれた。こんなに賑やかなのはドリーム・フェスティバルというのが行われているからなのか。


「一番になれば賞品がもらえるんだよ」


「賞品と言っても、おまけみたいなものです。みんなが誰かの人気者であることに気付いてほしいの。そんな心を持ってほしいのです」


ボクは「ふぅん」と軽い返答をして、溶けかけているアイスにかぶりついた。
賞品は気になる。だが、だからって誰かの人気者になるのはごめんだ。人気者だなんて、きっとなれない。



そろそろミリオンドリーム・アワードが発表されるらしい。
ステージの前で待っていると、何故か向こうからテラが歩いてくるではないか。ボクは「げ」と漏らして真ん中に位置していた屋根に飛び乗る。よかった、誰にも見られていない。安堵のため息を一つついてからここで待機することにした。


「みなさん、お待たせしました。ディズニータウン・ドリーム・フェスティバルのメインイベント、ミリオンドリーム・アワードの発表を行います」


ミニーともう一人、ミニーと同じようにドレスを着た女性もステージの奥から現れた。あの子供と同じ、アヒルか。
静まり返ったステージ前。誰が選ばれるのか、案外楽しみだ。


「今年の受賞者は、なんと複数いらっしゃいます。今年のミリオンドリーム・アワードは――」


と、言葉を止めるミニー。緊張感が高ぶるステージ前。ボクは関係なんてないだろうから欠伸でもしていた。


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