嘲笑、謝ろうと反省

「ひどいよ、アクア」


「うん」


ヴェントゥスの失望を込めた言葉に肯定を示したアクアは軽く上の空だ。
ふっ、と息を漏らす。ボクに視線が集まる、前に。


「あははははは!あっははははははははっ!」


表情は無のまま、口から出るのは笑い声。
滑稽でたまらないな。三人の仲良しトリオのすれ違いと、笑いたくとも笑うことのできないボクが、あまりにも滑稽すぎた。


「友情、つながり!脆いもんだね!所詮そんなもんだよ!」


「スペース、あなた…!」


「うるせえ」


三人の友情とつながりを嘲笑うように言い捨てたボク。きっとボクはみんなの悪役だ。
ぴょんぴょんとウサギのように二跳びほどの距離を離しながらボクは言い放つ。


「ボクはマスターの命令だろうと、帰らない。帰れない。せいぜいもがいてれば?その友情ってやつにさ」


笑い声なんて発したことのないボクの喉から無理矢理に絞り出した笑い声。ひょいひょいと屋根へ上って、屋根から屋根へと跳び移りながらボクは二人から遠ざかった。

(ヴァニタスの影響力、すごいな…)

ヴァニタスを軽く真似てみたつもりだが、不自然じゃなかっただろうか。
さっきから慣れないもの続きで疲れた。そのせいか、今度は全身の力が抜けたせいでガクンと足が屋根から滑る。このままじゃ落ちてしまう。ふわりと浮遊感を感じながら、それでもいいかなと思って下を見た。

下には長い髪で緑の瞳の男性と青い髪で片目が隠れた少年がいるではないか。このまま落ちたら二人の上に落下してぺしゃんこにしてしまう。混乱と錯乱の中、ボクは咄嗟に手を伸ばす。屋根を掴んで体を折り畳み、バレないようにと息を殺して二人が過ぎていくのを待った。
過ぎていったところでホッと安堵のため息を一つついてから「よ」と下へ降りる。親子のように寄り添う二人の背中を横目で見てから、ヴェントゥスから貰ったチケットを取り出す。

(ボクって、悪い子だなぁ)

これじゃあマスター、誉めてくれないよ。ふぅ、と息を漏らしてからチケットをポケットに仕舞う。
謝ろう。チケットを貰ったわけだし、恩を仇で返すわけにはいかない。
ボクはまたひょいひょいと屋根に上ってヴェントゥスとアクアを探しに行った。


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