ざわめく出口、恐怖と好奇心

ヴァニタスが来ない。
出口も現れないでまた歩き詰めのボクがぼんやりと考えたこと。いつもならこれくらい歩けば会えるはずなのに。
ほんの少しだけ、寂しいな。
ヴァニタスにはヴァニタスの用事があるしいつも暇ではないだろうし。ただ闇の回廊を出たり入ったりする暇人かと思っていたが、どうやら違ったようだ。

ボクの方が今は暇人でしかなくて、ぼんやりと下らないことを考えながら歩いていると耳に入るのはざわめき。またか、とため息をついてその雑音を無視する。
ついこないだ聞いたときよりはボリュームが高くなっていて、無視しようにも簡単には無視できない。だからといってまた耳を澄まそうとすればまた倒れたらどうしよう、と若干のトラウマ。

ハッと前を見ると、現れたのはいつもの黒い出口ではなく白と黒がぐちゃぐちゃと混ざっている出口。気味の悪い動きでうぞうぞとうぞめく出口に鳥肌と寒気が。怖い、けれどあの先に何があるのか気になる。恐怖と好奇心が相まった結果。

(いーかないっと)

その気味の悪い出口に背を向けた。逆の方向を歩いていくと、何やら違和感。背後から聞こえたざわめき。その音はさっきの気味の悪い出口から聞こえたのだ。
再度振り返ってその出口を見つめ直す。入るべきか、入らざるべきか。そう悩んで立ち止まっていると、早く入れよと言わんばかりに何故か近づいてくる出口。


「く、来るな!」


払うように手を振ると、その気味の悪いほどにうぞうぞとしている出口から伸びた黒と白がボクの腕を掴んだのだ。引っ張られていく。このままじゃこの気味の悪いものに引きずり込まれてしまう。
何度も何度も「止めろ!」とか「嫌だ!」とか言ってみるが、案の定聞き入れてもくれない。それ以前に出口なんかに耳なんてものは無いのだが。行きたくない、と抵抗するも全て意味もなく終わってしまう。
下半身が出口の中に入ってしまって、もうダメだと諦めかけた。
だが刹那、背後から白い光が押し寄せてくるではないか。このまま気味の悪いのに引きずり込まれるのも嫌だが、光に包まれるのも嫌だ。
どちらもボクに選択肢を与えてはくれないらしい。ボクはそのまま光に包まれた。


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