報酬求め、一苦労

闇の回廊を出た先には、小さな室内ベランダみたいなところだった。まただだっ広いところに出たな、と思いながら下の方から声が聞こえて下を見てみる。なんとそこには、仲良しトリオに一人アクアがいるではないか。行く先々に現れる仲良しトリオに運命さえ感じた。
ベランダみたいなところの手すりに肘をのせ、頬杖をつく。


「わたくしが国中を回ってこの靴にぴったりの足を持つ女性をさがしてまいりましょう」


と、何やら若い男性に言う不自然な髭の持ち主である大公らしき人物の手には普通の靴なんかではない靴がのせてあった。目を凝らして見るに、あの材質はガラスのようだが。
その大公の言葉に若い男性は「本当か!?」と嬉しそうに言う。全然話が読めん。
「もちろんです」と意気込んでみせてから大公は微笑む。


「ようやく王子が結婚を決意されたのですから。この大公、どのような苦労もいといません」


なるほど、と頬杖をやめて握った手を開いた手に打ち付けた。
つまりはそのガラスの靴をはいていたたぶん女性に王子は恋をしたが女性は脱走した、と。何故脱走をしたか、気になってしまうのが人間の性。
耳を澄ましてよく聞いてみる。


「では早速、この城からほど近いトレメイン夫人の屋敷から行ってまいります」


そう言ってガラスの靴を大事そうに持ちながら行ってしまった大公。ボクは「ふぅん」と漏らして考え込んだ。

そのガラスの靴に合う女性を探す、こんなでかい城に住んでるんだから大金持ち、探し出したら報酬。これから導き出された結果は、女性を探せば何かしら貰えるということ。白雪には何も貰えなかったし、ここならきっと確実だろう。

(ボクってばあったまいー!)

アクアに見つからないようにどこに出るかはわからないがベランダみたいなところから出るため駆け出した。



「だ、誰だ!」


「警戒しなくてもいい」


こんな怪しい姿のボクが言ってもそう簡単には警戒心を解いてはくれない。困ったな、と思いながら単刀直入に本題に入ろうとする。


「その靴の持ち主、ボクが見付ける」


「おぉ、本当か!」


コクコクと頷けば大公は顔に笑顔を見せる。いとも簡単に警戒心が解かれてしまった。他の世界のやつらはみんな単純なのだろうか。
大公の笑顔に思わず目を逸らしつつ背を向けて歩き出した。靴の持ち主なんて知らないが、片方の靴を持っていれば決まりだろう。これは一苦労だ。
とりあえず、大公が向かおうとしていたトレイン夫人、だったかの屋敷へ一足先に向かうことにした。


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