罪の意識、光の拒絶

過るマスター・エラクゥスの顔。ここでテラを消したとして、ボクに残るのは何でもない。罪だけ。
仲良しトリオの二人だけでないマスターだって、泣いてしまう。

(そんなの、ボクは…!)

そんな顔見たいがためにこんなことしたんじゃない。
違う、違うから。ボクを恨まないで。
心の中のボクが、叫ぶ、叫ぶ。泣きながら「ダメだ」と。

ボクはテラを解放してキーブレードを消す。青い空を意味もなく仰いでからさっき放り投げた花束をまた拾い上げて女性が駆けていった道を歩く。
ふと、何気なく花束の匂いを嗅いだ。先程嗅いだときと変わらず、良い匂いだな。
テラをおいてけぼりにして何事もなかったように去った。


青葉闇で先があまり見えない森の中をただ歩いていると、普通の人が住むには小さな家が見える。その家からは何故かヴェントゥスが出てきた。
ヴェントゥスはマスター・エラクゥスの話を聞いていなかったはずだが。つまりは許可をもらわず異世界に来たということか。ボクと同じ帰還命令が出ているはずなのに、呑気なやつだな。

(そんなこと考えてる場合じゃない!)

ヴェントゥスがこっちに歩いてくる。ボクはただ女性に花束を渡しに行きたいだけなのに何でこんなに狼狽えなくちゃならないんだろう。
とりあえず軽い足取りで木の葉の中へと身を隠す。ヴェントゥスが通り過ぎたところでホッと安堵のため息を漏らしてから、その小さな家へ足音をたてずに走った。

窓から中を見てみると誰もいないようだ。ドアを開けて中に入ってみると、階段を上った先、二階の方から物音が。
二階へ上ってドアを開けてみた。すると、部屋の隅で女性がこちらを見ながら震えている。すごい怯え様だ、と思って今のボクの服装じゃ怯えるか、と思い直す。いやいや、それ以前にボクが不法侵入したから泥棒か何かだと思っているのか。まあ、そんなことはどうでもいい。


「忘れ物、届けに来た」


持っていた花束を向けると、女性は「まぁ」と言って恐怖をなくした。単純だな、と思いながら花束を受け取ろうと歩み寄ってくる女性。礼儀正しく礼をしながら渡そうと女性の手がボクの手にそっと触れる。

走る電撃。
脳の隅々や頭から足の指の先まで走った衝撃にボクは花束を離した。パサリと音をたてて落ちた花束。その衝撃で広がる花の香り。心配そうにボクを見てくる女性にボクは錯乱。

(何だよ、今のは…!)

心臓が今にも飛び出しそうなほどに高鳴る。

(そうか、そうか、そうか…!)

この女性が人外ことマレフィセントが言っていた一切の闇を持たない純粋な光の心の持ち主の一人。ボクはそこまでに闇に溺れていると言うのか。光を拒絶するほどに。


「大丈夫?」


「ち、近寄るな…!」


キーブレードを取り出して向けると、彼女の表情に恐怖が戻る。
簡単だ。彼女を怯えさせるのも、消すのも。


「これ以上近寄ったら、消――」


「消すぞ」と、言葉を続けようとするが。ボクの言葉は小さな人が部屋に入ってきたことで遮られた。


「こ、こら!女の子に何するか…って、どちらも女の子か?」


マズイ、と思った頃にはボクと女性は小さな人に引っ張られて下へと行くことになってしまったのだ。


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