行使、唆す人外

柄にもなく早歩きになってしまっていたボクは城の中へと足を踏み入れた。だだっ広い城の中にボク目は正に点。またもや無意識に「はぇー」と呟いてからこの無駄に広そうな部屋を一通り見回してから次の部屋へと進もうとしたその時。
現れた見たこともない生き物。青くて赤い目をした小さいのと赤い壺のようなものに羽が生えて浮いているのが出てきた。無視もしていきたいところだが一応ここには強さも求めてやってきたのだ。とりあえず排除しておこうと思う。
キーブレードを取り出して左手で握る。構えてから一度深呼吸。キッと前を見据えて足を地から離した。
それは本当に一瞬のこと。床へと着地してすぐに青と赤の生き物は消えていった。呆気ないな、と思いながら先へ進もうと歩き出す。
今思えば、さっきの生き物がアンヴァースだったのかもしれない。確かに大量発生かもしれないな、と今また大量に現れたアンヴァースを見据えながら思う。

(もっと強いの、いないのかな)

アンヴァース軍団の中に突っ込みながら、ボクはぼうっとそんなことを考えていた。


全員倒したかな、と思ったところで何やら禍々しいオーラに包まれている扉を発見する。闇の力か。そんな扉と自分の持つキーブレードとを交互に何回も見てからボクは後ろに下がってキーブレードの先をその扉に向けた。キーブレードの先から出た白い光は扉にぶち当たり、その禍々しいオーラを消し去ったのだ。
闇の力に溺れているボクでもこんなことができるのか、と感心。そんなことはいいとして、ボクはその扉を開けてみることにした。
その部屋にはわずかながら人の気配を感じる。部屋の中に遠慮なく入ってみると、視界の端にベッドがあってそちらに視線を移す。
そのベッドにはなんとも美しい女性が両手を胸に当てて眠っているではないか。それに、何だかずっと近くにいると胸の辺りがモヤモヤしてくる。それでも思わず女ながらに見とれているともう一つ気配が増えた。

(おまえか、人外…)

ため息でもつきたい気分だが、とりあえずでも気を遣っておこう。


「一切の闇を持たない純粋な光の心。この心を集めれば――」


変なところで言葉を区切られてしまい、興味はないが気にはなってしまう。いつまで待ってみてもしゃべろうとする気配がないためボクの方から「何?」と言ってやると人外は嬉しそうに笑みを深める。べ、別に、あんたのためなんかじゃないんだからね。


「七つの純粋な光の心。それを集めればすべての世界が手に入るのさ。この世界だけじゃない、外の世界も含めたすべてをね」


「…意味不明」


全く持って意味不明だ。だからなんだと言うのだ。聞いて損した。
すると、人外は長い爪の先でボクを指差す。人に指を指しちゃいけないって子供のとき教えられなかったのか人外。


「おまえみたいなのが持っている鍵、キーブレードとかいったかねぇ?」


「どういうこと?」


この人外の前ではキーブレードは見せていないはず。それなのに何故知っているのだ別世界のこの人外が。決して罵っているわけではない。


「おまえが来た後にもう一人来てね。確か、テラとかいう名前だったか…」


「テラが…」


ボクが来た後にテラもここに来たということか。鉢合わせだけは絶対にしたくない。もしそうなったら帰還しろとかマスターが心配とかなんとか言われてしつこそうだ。


「キーブレード、それでないと心は手に入らない。おまえは大切なものを探しに来たと言ったね。そこに眠っているオーロラ姫の心を取り出したら、教えてやらなくもないよ」


はっきり言おう、信じられない。ボクが否定を表すために首を横に振るが、マレフィセントの笑みは未だ消えず。


「おまえは私に従うはずさ。見えるよ、おまえの心にある闇が」


だからどうしたと言おうとすると、マレフィセントが杖に付いている緑の玉を撫でた。すると、ボクの体に緑色が纏わされる。


「何を…!?」


「さぁ、私に従うんだよ」


人外のその言葉を最後に意識が、切れた。


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