愚者、無駄と心の中

ボクも仲良しトリオと一緒に戦ったわけだが、居ても居なくても変わりはなかった気がする。それ以前に、何のためにボクは戦ったんだろう。特別な意味も何もなかったのにな。まあ過ぎてしまったことは仕方ない。ボクは頭を掻いてからさっきの場所へと戻った。


「不測の事態であったが、いかなる状況においても心を平穏に保てるかを試すいい機会であった故、あえて止めなかった。試験を続けるとしよう」


さすがマスター・エラクゥス、いついかなる時も冷静沈着だ。マスターの名は伊達ではない。

テラとアクアはお互いにキーブレードを構えて相対した。お互い歩を止めて睨み合う。二人の間には絶対入りたくない。視線に殺される刺殺ならぬ視殺される。


「次にテラ、アクアの二人の候補者同士の模擬戦を見せてもらう。勝敗は問わず。能力が拮抗する相手と相対した時こそ心は浮き彫りになるのだ」


お互いに戦闘準備万端。今すぐにでも飛び込んでいけそうだ。
マスター・エラクゥスの「始め」の合図で二人のキーブレードは交わる。心地のよいほどの金属音にボクは目を閉じた。
二人の声と、足音と、金属音。
二人の姿が思い浮かぶ。
二人とも、真剣だ。
ハッと目を開ける。テラの左手に見える紫、闇。それに気付いたテラは使うものか、と心の強さで闇を振り払う。

無駄なのに。
心の強さで闇を押さえ付けようなんて愚の骨頂。無駄、無駄、無駄無駄無駄無駄なのにね。闇は受け入れるべきなんだ。そうすれば強大な力を手に入れられるというのに。愚かで愚かで愚かすぎて見るに耐えない。

ただ流れるようにゼアノートに視線をやると、あいつはまたもや不気味に笑っていた。笑顔がステキだね。スマイル0円ください。




「承認試験の結果を伝える。テラ、アクア共に優秀であったが、此度はアクアをマスターとして承認する。テラは心の闇を制する力が不十分であると判断した。更なる修行と精進に期待する。以上だ」


これが結果か。
二人は目を見開いたまま固まっている。結果を認めようとしないのだろうか。
ボクは結果がわかってしまってもういる理由がなくなってしまったため、試験会場を出た。と言っても、今はゼアノートからの“ご褒美”を受け取らなければならないため、部屋の外で待っているだけなのだが。どうせ二人のうちどちらがマスターになったとしても仲良しトリオなんだから悲しんで、ややこしい展開になると想像できたはずなのに。




「マスター・ゼアノート」


階段を最後まで下ったところで待っていると、見知らぬ少年がゼアノートの隣にいた。ヘルメットのようなもので顔全体を隠しているせいで何者か見当もつかない。初めは首をかしげるが、どうでもいいやと思ったボクはゼアノートに歩み寄る。


「協力した。世界を渡る力」


ゼアノートに向けて寄越せと言わんばかりに手を出すと、ボクに向かって投げた黒。それをナイスキャッチで受け取ると、何やら衣服のように見える。


「それを身に付けることで闇に呑まれることはなくなる。有効活用するんだな」


それだけを残して去ってしまった老人と多分ボクと同じくらいの少年。二人の後ろ姿を見送りながらゼアノートから貰った衣服を抱き締めた。


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