6/7 トキ春で「夜は短し」パロ



・トキ春で「夜は短し歩けよ乙女」のパロディ
・トキ春というよりトキ→→→春
・トキヤ=先輩、春歌=乙女、古本市の少年=ちびHAYATO様
・先に謝りますごめんなさいでも楽しかった




 ようやく見つけ出した彼女に駆け寄ろうとした足は、腹の辺りに衝撃を受けたことによって止まった。
 べちゃり、という音と小さな悲鳴に視線を遣れば、そこには尻餅をつく少年と、自らのシャツに飛び散るソフトクリームがある。無惨な姿になってしまったソフトクリームを見上げて悲しげにしていた少年は、トキヤを睨みつけた。

「何をするんですか」

 ようやく彼女を見つけたのに。何か言いたげに口を開いた少年の先を制してトキヤは苛立ち混じりに吐き出した。
 前方にいた彼女にしか注意を払っていなかった自分の注意力散漫とか、年端も行かぬ少年に苛立ちを向けて大人気ないないとか、普段のトキヤならば冷静に対処できるはずなのに今回ばかりはそれができなかった。
 地獄の釜の底が開いたからだと自らを納得させなければ脳みそが沸騰してしまいそうな暑さの中にあるのだ。そんな中で求めて、求めて、求め続けた人をようやく見つけた喜びはトキヤを第七天国へと運んだ。それを一瞬で地上にたたき落とされたのだから、苛立つのも仕方のない話だろう。
 こうしている間にも彼女の後ろ姿は遠ざかっていく。嗚呼、行かないで私の天使!暑さで若干思考がおかしいトキヤの足元で、少年がため息をついた。

「それはこっちの台詞だよ。ぶつかってきたのはそっちなのに、謝罪もなしなんて酷い大人だにゃぁ」

 少年はトキヤのそれはもう恐ろしい目(春歌に関係する状況でのみ発動)を真正面から受け止め、ぷくりと頬を膨らませた。自力で立ち上がり、服の埃を払いながら「これだから最近の大人は」などとぶつくさ呟いている。可愛くない。

「さてお兄ちゃん、ボクのソフトクリーム、弁償してもらうからね?」
「申し訳ありませんが今少々立て込んでおります熨斗付きで弁償させて頂きますので、また後ほどということで」
「清々しいくらいの棒読みだね!おっと、逃がさないよ、お兄ちゃん」

 トキヤは自らの精神衛生のため、颯爽とその場を去ろうと足を踏み出したが、少年はその足に纏い付いた。のしかかってくる少年は案外重く、遠ざかる彼女を颯爽と追おうとした足は、見事にその場に縫い留められる。

「何をするんですか」
「弁償しておくれ」
「私は忙しいのです」
「女の子のお尻を追い掛けるのがそんなに大切な用事なのかにゃぁ」
「そうですが、何か?」
「うわぁ、開き直った!最低だ!この人ストーカーです!逃げて!お姉ちゃん逃げて!春歌ちゃん逃ーげーてー!」
「なっ…こら、人聞きの悪い!私は純粋な興味で彼女を…というか何故その名前をあなたが知っているんですか!」

 辺りに響き渡る声で叫びながら暴れる少年の口をなんとか塞ぐと、トキヤはそう問い掛けた。鼻まで押さえられて今度は苦しさから暴れた少年は、トキヤの手から解放されると暑さを感じさせない涼しげな顔でこう宣ったのである。

「だって、ボク、神様だもん」

 ちりーん、と店先に吊された風鈴が可憐な音を響かせた。




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 こうして一ノ瀬トキヤの受難(夏の巻)は始まったのであった…
 勿論続きません。←





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