2/4 綺羅春



・こんな綺羅春が書きたいなぁという話
・もしも昔に綺羅と春歌ちゃんが出会っていたら、なパラレル


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 ふ、と。
 目が合った。その瞬間、瑛一とナギの声が響いているはずの室内から音が消える。それだけではない。空調の音も、資料が立てる紙の擦れ合う音も、ひとの立てる音も、すべてが遠くへ行ってしまったかのように届かなくなった。それを「見入る」と呼ぶのだと、数日後に春歌は知ることになるが、その時はただ、綺羅から目を逸らせずにいた。どうして目を逸らせないのだろう、どうして気になるのだろう、そんな思いも白い意識の中に溶けていった。
 苛烈な金色の、目だった。暖色であるはずのそれは、しかし冷たい印象を相手に与える。彼の表情がほとんど変わらないことも手伝っているのだろう。彼に見つめられると、いつだって春歌はすべてを見透かされているような緊張感を得た。
 だが、その日はいつもと少し、違っていた。じっとこちらを窺っていた綺羅が、不意に笑ったからだ。

「――!」

 満面の笑みには程遠い、小さな笑顔だった。彼をよく知らない人間が見れば、笑顔と判ずるのが困難であろう、そんな表情。微かに口の端を持ち上げ、目を細めただけとも取れる。しかしそれはとても、とても優しい笑顔だった。
 息を飲む。綺羅の金色から受ける冷たい印象はどこかへ飛んでいってしまった。どきり、と心臓が鳴って、ますます目が逸らせなくなる。



 きれいなめ、だと思った。



(あ……れ?)

 綺羅の目を綺麗だと思った瞬間、春歌は違和感に気づいた。既視感と言ってもいいかもしれない。彼の目に対してプラスの印象を抱くのは初めてのはずなのに、何かが引っ掛かった。本当に初めてなのかと誰かに問い掛けられたような、そんな感覚に陥る。

(わたしはこの目を、どこかで…?)

 見たことがあっただろうか。既視感の正体に意識を奪われた春歌は、綺羅から目を離した。彼の笑みに、少し寂しそうな色が加わったこと、そして、彼がそっと襟に留まる兎に触れたことに気づかぬまま。


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 というような長編を書きたいんですがね!書けるんですかね!(所用時間的な意味で)





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