10/7 錫→月(stsk)





 張り巡らせた予防線。今のこの心地好い関係を壊さないためだと言い聞かせながら、本当は、ただ怖かっただけなんだ。
 月子、俺は、お前のその瞳が俺を拒絶するのを見たくなかった。羊が現れて、三人でいたのが四人になって。
 変わらないと思っていたものが少しずつ変わっていく。変わらないでほしいと願っていた俺を一人残して緩やかに、けれど確実に、変わっていった。
 置いてきぼりにされたような心許ないそんな状況で、お前に拒絶されたら。そう思うだけで苦しくなった。心臓を握り潰されるような、立っている地面がいきなり消えるような、見上げた空が落ちてくるような、そんな不安に襲われた。
 だから俺は、線を引いた。傷つけないためという建前で、本当は、傷つかないようにという本心を隠した予防線を。

(強くならなくちゃいけない。そう思っても、口は意に反して働いた。無意識に線を引く。できるだけ自然に見える、けれど真っ赤な色をした線。気づかなくていい、でも、どうか気づいてくれ、と願ってしまった俺は、狡くて臆病な人間だった)


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 錫也先生は臆病なひとだよなーと。






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