9/21 綺羅春



・綺羅春っぽいの
・綺羅くんのキャラクターを捉えきれていません
・こんな感じ?みたいなお試し小話


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 彼女の髪が好きだった。それはとても甘そうな、柔らかな髪だった。ひなたの色を含んだ艶やかな髪は、ココアのような、ストロベリーチョコレートのよいな色をしていて、きっと口にしたら甘いのだろうと思った。柔らかに笑う彼女そのものだとも思った。
 彼女の瞳が好きだった。それは不思議な色合いをした、綺麗な目だった。多分、一番近いのは春の野に咲く菜の花だろう。春の風と大地と水に愛された花をそのまま硝子に閉じ込めたかのような印象だった。春を名に持つ彼女に相応しい目だと思った。笑みに揺れる目はひどく印象深かった。
 彼女の髪と目。その二つを彼はすきだと思った。綺麗だと思ったし、触れたいとも思った。もっと近くで見たいと、わきあがってくるくすぐったい何かが言う。その想いに、彼は抗うことはなかった。
 ただ、理解ができなかった。何故自分は彼女に対して触れたいなどと感じるのか。近くで見つめたいと思うのか。さらりと髪を揺らし、ひだまりのように笑う彼女にそばにいてほしいと願う自分は何を求めているのか。
 そして、何よりも理解できないのは。
「あ、の……?」
「…………」
「どうか、しましたか?」
 去っていこうとする彼女の腕をとっさに捕まえてしまった、自分自身だ。

(その答えは、彼女にならわかるだろうか)
(俺はその答えを、知らない)






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