あ、間違えた
「だから、ここはこうですって」
「こ、こう・・・か?」
ガシャン
「あ」
「え」
チュドーン!!
かれこれ五回目のカラクリ作りの失敗に、僕はいらついていた。
「またですか名前先輩」
「またですよ喜八郎・・・」
至極申し訳なさそうに名前先輩は身を縮こませる。はぁと溜息を漏らせば、ビクリと肩が揺れた。
「本当、名前って不器用というか音痴というか」
「先輩つけろ先輩」
「なぜ作法委員会にいながら、名前先輩はこんなにもカラクリ音痴なんでしょうね?」
「それは俺が聞きたい」
なんでカラクリ作れないんだ俺は、と僕の目の前で落ち込む#名前#先輩にある意味才能ですよこれ、と励ましの言葉をかける。なんでかわからないけど、さらに落ち込んだ。おやまぁ。
「本当、なんで俺作法委員会なんだろう・・・。作法委員会委員長の立花仙蔵先輩の宝禄火矢に何故か失敗作の俺の宝禄火矢が混ざってて大爆発を起こしてしまうし、作法委員会四年生綾部喜八郎の作った落とし穴」
「蛸壷」
「・・・蛸壷に落ちたと思ったら何故か綺麗に落ちれなくて二段階仕掛けだったのにそのカラクリが発動しなかったり、作法委員会三年生浦風藤内が作った歩くカラクリは他の作法委員会のメンバーが触っても何も問題なかったのに俺が触ったら壊れてしまうし、作法委員会一年生笹山兵太夫と黒門伝七の作った紐を引っ張れば上から物が降って来るカラクリは何故か俺が引っ張れば紐が契れてしまって物が二人の上に落ちてきたりとか」
「保健委員会の方がお似合いだよね名前先輩」
「敬語、敬語」
しかし、本当に名前先輩はこんなに不器用で不運なのに作法委員会にいるのだろうか。中々に不思議である。保健委員会の方がお似合いなのに。
「でもさ、喜八郎」
「はい?」
「俺が保健委員会だったらこんなふうに喜八郎と喋ったりしてなかったってことだよな」
「そうですね」
「だから俺は、作法委員会でよかったって思ってる」
そういって笑った名前先輩に、そうですかと言葉を返す。冷たい反応だな、と言われたけど聞こえないフリをした。
だって、
「・・・ほら先輩、もっかい作りましょ」
「あぁ」
だって、
「ここをこうやって、はい・・・で、」
「こうか?」
「あ、そこは、こうで」
ガチッ
「あ、間違えた」
「え、お前が?」
「はい」
チュドーン!!!
あ、間違えたさっきのは先輩が言ってたので正解だった「喜八郎!?」
「今のは#名前#先輩が悪いんですよ」
「俺なにもしてないよな!?」
しましたよ。・・・僕も、なんだかんだ言いながら先輩が作法委員会でよかっただなんて。
恥ずかしくて言えませんよ。
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