惰眠をむさぼってみたら

注意書き
*電波。





嗚呼、星が墜ちてくる─…


「…ん輩、名前先輩」

「わあ、!」

ぱちりと目を覚ました名前の視界には、忍たま四年生の綾部がいた。何故だか不機嫌そうな顔をしている。

「どうしたの、あやべちゃん。そんな顔をして」

「先輩“あやべちゃん”と呼ぶのはやめてくれませんか。それと、僕のターコの中で勝手に寝ないでください。」

「そんなことよりあやべちゃん、」

自分の言葉を無視されたことに苛つきながらも綾部が、なんですか?と問い返す。

「たいへんなのよ。星が墜ちてくるの」

「おやまあ、流れ星とは先輩にしてはロマンチックですね。ところでいつまで僕のターコの中に居るつもりですか?」

綾部の言葉に名前は、ちがうのちがうのよと首を横に振った。

「ながれ星ではないの。星が急転直下脳天直撃なのよ」

「急転直下はおかしいでしょう。それよりいい加減、僕のターコから出てください」

「ついにこの星も終わるのね…」

悲しそうに眼を伏せる名前に、綾部は意味が分からないと肩をすくめる。

「まあ、夢の話なのだけれど。」

「知ってました。そうそう名前先輩、僕はターコの中で昼寝をするつもりで来たので出て行ってください。」

突然あっけらかんとした物言いをする名前に同じくあっけらかんとして綾部が言うと、名前は何故?と問うた。

「そのターコは三人用なのです」

「じゃあ、私とあやべちゃんのふたりがはいっても大丈夫なあんしん設計ね」

口がすべってしくじったと言わんばかりに、綾部は口を尖らせてみせる。そんな綾部にかまわず名前はあやべちゃんもおいでよと、蛸壺の中からくいくいと綾部の袖をひく。一つ溜息をついた綾部は蛸壺の中に入り名前の隣に腰をおろした。

「ちょうど寒くなってきたところだったからあやべちゃんが来てくれてよかった」

「もう夕方ですしねえ、」

「おなかがすいた」

くるくると話題が変わる。
しかしもう、綾部はあまり気にしない。彼女は自分に都合のいいこと以外は聞いていないし、綾部もそこまで思ったことをひきずるタイプではないのだ。

「まだ夕食には少し早いですよ」

「今日の晩ごはんはおうどんだっておばちゃんがいってた」

「まあ、本当ですか。じゃあ僕はトッピングにねぎと煮玉子を頼みます」

「そういえばあやべちゃん、お昼寝するんじゃなかったの」

「名前先輩のおかげで夕寝です」

「半刻はねれるね」

「おやまあ、」

本当だ、と綾部が目を見開くと名前はクスリと笑って空を仰ぎ見る。綾部も同じように見上げると、蛸壺の形に切り抜かれた空には星が瞬いていた。まるで何かの絵のようだ。すると、

「あ。名前先輩、今流れ星が流れましたよ」

「きっとねがいごとが叶うよあやべちゃん」

「滝が下僕になってくれますように。滝が下僕になってくれますように。滝が下僕になってくれますように。」

「それは素敵なねがいごとね」

「そうでしょう?」

ふふふ、と笑う名前の手に綾部はそっと自分の手を重ねて、切り抜かれた空を見ながらゆっくりと瞼をおろしたのだった。


そうしてまた、寝過ごして夕飯を食べそこねた二人は、お星さまが墜ちてくる夢を見るのです。


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