夕焼けに映える



「じゃあ、また明日」

 少しの間触れていた呼吸が、静かに離れる。

「…いちいち懲りないな、」

 先刻まで…否、ほんの数秒前まで、『只の喧嘩友達』だったそいつは、この瞬間『愛しい君』へと姿を変える。

「恥ずかしいヤツ…」
「いつも言ってるだろ、お前が好きだからって。次は文次郎からもしろよ」

 伏せていた顔を上げる。
 映り込む夕焼けが、彼の瞳を妙に輝かせていた。



 …嗚呼、今日の口実は、それで充分。



「な、もん…――」

 全て、西を赤く彩るアナタの所為にしても良いですか。

 彼の瞳に輝くアナタに吸い込まれたと、そう呟いても良いですか。

 それとも他に、何か上手い言い訳でもあるのでしょうか。





 ──さぁ、考えよう。

 この唇が、離れてしまう、その前に。


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