小さな鈴の音にのせて




「留三郎、こないだの合コンどうだったの?」

次の日。

いつも通り仕事をしていると、同僚の善法寺伊作が話しかけてきた。

「君、今年の初詣で『お願いします、カミサマ!どうか!どうか可愛い彼女を!俺にお与え下さい!』とか言いながら手合わせてたけど、ご利益ありそう?」

お題はもちろんあのときの合コンの「収穫」について。
まあ、あの合コンは伊作に連れられて行ったものだから、気になるのも当然なんだけど。

「ん?今度会う約束した」

詳しく言えば、今度の日曜。
デートの場所は、映画館。

「え、そうなんだ?その割には暗いね、今日」

図星を突いてくる伊作に苦笑い。
結構鋭いんだよな、こいつ。

「…なんか最近、ペットの様子がおかしくて」

いつものことなんだが、もんじを“ペット”と言うのには、少し抵抗がある。
まるで、ずっと前にやっていたドラマみたいだ。
まぁ、あれは人間同士な上、男と女だったけど。
…うらやましい…と思うこの感情が、何だかよく分からない。

「ペット?留三郎がまずいご飯あげてるんじゃないの?」
「いや、そうじゃないとは思うんだけどな」

もんじの主食はおにぎりだし(しかもありがたいことに、具なしの白むすびで満足なご様子)。

「病院連れて行ったら?」
「…………」

どっちの?

動物病院に連れて行って、診てもらえるとは思えない。
かと言って、人間の病院も違うような…。

それにまず、病気じゃないと思う。
食欲はある。
普通の動物と違って、具合が悪かったら口で言える。

だけど、元気はない。



あの、昨日の電話の後から。


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