愛しい貴方に、愛の花束を。




まさか自分が、“一目惚れ”をするなんて思ってもいなかった。


“…来た”


その人とは、毎朝同じ時間に顔を合わせる。


“…あのスーツ、似合ってるよな。どこの会社に勤めてるんだろ?…あ、今日は寝癖がついてる”


顔見知りなのか、通学中の小学生や近所の主婦に、笑いながら軽く会釈をしている。


“…ちょっとキザな顔立ちだけど、笑顔が柔らかくて……好きだな”


その笑顔がきらきら眩しくて。


“…俺に、向けてくれないかな”






「あのー、すいません。プレゼント用の花束を探してるんですけど…」



気付けばその人の事ばかり考えていて。



「プレゼントですか?どういう人への、どのようなプレゼントでしょうか?」



これを恋と呼ばずに、なんと呼ぼうか。



「…そうですね、一言で言うなら…」








「愛しい貴方に、」



“愛の花束を。”







END.


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