愛しい貴方に、愛の花束を。




家に着いた頃、文次郎からメールがきた。

『何で帰ったんだよ?』

って。

俺はそれを見て深いため息をつき、返事はしなかった。

いや…しなかったというより出来なかった、のほうが正しいのかもしれない。
なんて返せばいいか、思いつかなかった。

そしたらまたメールがきて。

『もう寝たのか?さっきの事だけど、もしあいつに気を使って帰ったなら悪い事したな。でもあいつなら平気だから今度会うときは帰るなよ?じゃあまた。おやすみ』

だって。


…違うんだ。

オーナーの息子だから気を使ったとかじゃなくて、単に嫉妬しただけなんだよ。

パタン、と携帯を閉じて再びため息をつく。



俺ってこんなだったっけ?こんなに独占欲強かったっけ?



…いや、わかってるんだ。


相手が文次郎だから。

こんなに人を好きになったのは初めてだから。

だから自分の気持ちがコントロール出来なくなってるんだ。


「はぁ」

嗚呼、情けない。

だいたい文次郎が誰かと親しげに話してたって仕方ないのに。
俺なんか出会ってまだ数か月なんだから、むしろそんな事は当たり前なのに。

頭じゃ分かっているけれど、気持ちが納得していない。

我侭な俺は、文次郎の一番は自分でいたいと思っている。

ベッド脇のサイドテーブルに視線を移すと、以前文次郎に貰った薄紫色の花を活けている花瓶に目が止まった。
もうとっくに枯れてしまって、茶色く変色したそれを、棄てる事が出来ない女々しい俺。

苛々モヤモヤする気持ちを抱えたまま、ベッドに潜り文次郎の事を思って目を瞑った。

そしたら文次郎の隣で、例のオーナーの息子が、無邪気に笑って俺に手を振ってきた。


「文次郎から離れろぉ」


やばい、夢に見そう…。


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