小話
2014/07/05 13:34

ある日、閉店後の花屋にて。



「文次郎、知ってる?」

「ん?何を?」

「今さ、産まれてくる人間よりも死ぬ人間の方が多いんだって」

「あー…、少子高齢化社会だからな」

「で、このままいくと、最後二人とかになっちゃうらしいぞ」

「へぇ…」

「イヤだよなぁ。どんどん人間減っちゃうなんて」

「……少なくなっていく…」

「そうそう、寂しいよなぁ」

「じゃあ…俺、もし生まれ変わるんならずっと未来に生まれ変わるようしようかな。それこそ、人口が二人とかになった時ぐらいに」

「………は?」

「楽だよなあ。留三郎のこと探さずに済むし」

「…………」

「二人だしなあ。俺がジッとしていても、お前が探しに来るだろうし」

「…………」

「確実に出会えるしなあ…うん、悪くない」

「…………」

「何だよ、ぼーっとして…口開いてんぞ」

「…文次郎、ズルい!」

「は?何が?」

「…何でいきなりそういう事言うかなあ…」

「?」

「あーもー…好きだ!大大大好きだぞ、文次郎!」

「……意味わからん」

「でも…俺、文次郎だけはどれだけ人口増えたって、必ず探しだしてみせるから!」

「…はいはい。あ、だけど真っ赤なバラ100本は勘弁してくれよ。来世の俺が『うわ、頭が残念な人だ!』って思ったら可哀想だろ」

「おまっ、あの時そんな事思ってたのかよ!」