小話
2012/06/03 06:08

「とめ、ケッコンしよ」



サラリと笑顔で言われた一言。

…いや、アルコールの回った紅い顔で言われましても。

「はーいはい。飲み過ぎだぞー文次郎。もう寝なさい」

「やだ」

「ワガママ言わない。明日も大学行かなきゃだろ?」

「やくそくしてくれるまでねない」

「……分かった分かった。結婚しような、文次郎」

「ほんと?」

「ほんとほんと」

「……んじゃねる」

何だか今日は素直な酔っぱらいを抱きかかえてベッドまで運び、布団を掛けた。

そしてそのまま部屋を出ていこうとした時、

「…」

「ん?」

振り向くと、布団から鼻より上だけを出した文次郎と目が合う。

「……やくそく、だぞ」

「…そっちこそ忘れんなよ」

少し酔いの覚めた口調に嬉しくなってしまった。


…心配するなって。

俺は最初からそのつもりだから、な。