小話
2012/05/24 10:05

俺だって、大好きなんだって。
普段、滅多に口には出さないけれど。

「……ん、」

ある朝ふと目覚めると、当たり前のように俺は留三郎の胸の中にすっぽり。

「とめ?」

呼んではみるけれど目覚める気配なし。
だから、ちょっとだけ…胸元で、すりすり。
そして匂いを吸い込む。
…落ち着くなぁ、なんて。

「とめさぶろー?」

再度呼ぶけれど、心地良さそうに寝息を立てるばかり。
ちぇっ。
つまんねぇな。

「おーい、寝てんのかー?」

それでも、やはり起きる気配はない。

よし、こうなったら。
少し顔を上げて、留三郎の顎に鼻先で、ぐりぐりぐり…。

こらー。早く起きろー。
今、起きたら俺から口を吸ってやっても良いぞー。

そう心で思って、再びぐりぐり。

なのに全くもって起きやしねぇ。
せっかくのチャンスを逃すなんて残念だな、留三郎!
……。
よし、そんな可哀相な留三郎には特別サービス。

ちょっと体をずらして。

どうか起きませんように。

そう願って俺より少し薄い唇と、自分のそれを軽く重ねた。

そして、いそいそと布団に潜り込んで留三郎の胸元に顔を寄せ、ぎゅっと抱き着く、と。
俺の体に回された腕に一瞬、力が入ったような気がして。

「…留三郎?起きてるのか?」

少し顔を上げて呼びかけるも返事はなし。
……。
再び胸元に顔を寄せ、小さな声で言う。

「もし起きてるなら、もう一回俺からしてやっても良いが?」
「はい、起きてます(即答)」
「…てめっ!やっぱり起きてたんじゃねぇか!」

言いながら胸元に埋めていた顔を上げようとしたのに。
まるで、それを遮るかのように頭を押さえられ、ぎゅっと抱きしめられる。

うわっ。く、苦しい…!
そう思って胸元で、んーと唸ると、ぱっと緩められる腕。

「ん、はっ、苦しいっつの…!」
「ごめんごめん」

なんて優しく笑いながら頭を撫でてくるもんだから。
怒るに怒れないっつの…ったく。

「……ほら、起きるぞ!」

自分のこれまでの行動が妙に恥ずかしくて、留三郎から離れようとしたら。

「待って、」
「あ?」

ちゅっ

「な、何を!?」
「嬉しかったから、お返し」
「はぁ!?」
「それと、さっきの約束通り文次郎からの『もう一回』も頂戴?」

〜〜ッッ!

あーもう!お前って奴はホント、

「バッカじゃねーの!」