小話
2012/03/05 06:52

今日は、文次郎と外で『でぇと』(注:文次郎にとっては只の買い物)。

とりあえず、門の外で待ち合わせ。

妙にそわそわしながら、文次郎を今か今かと待つ。


……。


……来ないんですけど。


待ち合わせ時間から既に半刻過ぎた。


…マジか。


あの文次郎にしては珍しい遅刻ぶりに、ここに向かう途中で塹壕にでも落ちたんじゃないか、まさか悪しき奴に(貞操目的で)攫われたんじゃないか、そんな不安に駆られるばかり。


落ち着け。

落ち着け、俺。


とりあえず学園内に戻ろうと考えた、その時。






「とめさぶろー」


後方から聞こえてきた、何とも呑気な声。

振り返ると、珍しい程の爽やかな笑顔付き。


「文次郎!」

「よう」


くっ、なんて可愛らしい笑顔…ッ!(食満ビジョン)…って笑顔に騙されてる場合ではない。


「おい、遅刻だぞ」

「いやー、実は昨日の夜、眠れなくて。寝坊だ、悪い」

「…また鍛錬か?」

「違う違う。留三郎と出掛けると思ったら、ドキドキして眠れなくて…」

「………」

「…なーんて冗談だ。俺だってユーモアを…って、おいどうした?」

「……文次郎が…俺との『でぇと』をそこまで楽しみにしてくれてたなんて…」

「『でぇと』って何だ?」

「ヒャッホオオオイ!!我が世の春が来たああああ!」

「………」

「ヒャッホオオオイ!!フー!!君が好きだーと!叫びーたい!」

「すみません小松田さん、俺、入門表にサインします。え、ケマ?誰ですかそれ?」




その後、しばらく文次郎に目も合わせて貰えませんでした。

……何故だ?