side日向


「…伊月の両親は、――殺されていた」

「い、いやぁあぁぁっァアアアア!!!」


振り絞って言った言葉の最後らへんは、伊月の絶叫により聞こえなかった。


〔バチバチバチ〕


伊月の姿に変化が起きだした。
すでに絶叫を上げていた時に今まできちんと正座していたのに
正座の床に尻をつける形に崩れ、
足の間に手を置き体を上向きに支えているかのようになり、顔も上を向き、
目は白目の涙目で口を大きく開いての絶叫。
そこからまず、髪が変化する。
ストレートの漆黒の髪は、緩いウェーブがかかり、とめどなく伸びる。
着物も違う柄の着物になる。
端から着物自体が変換していく、
白地に赤い彼岸花の着物に、黒い帯。遊女のような肩の出た着かた。
妖力が溢れ出て電流が流れてるはずなのに、気にも留めない。
絶叫を上げていた口は閉じられ、目は、焦点はあっていないが瞳が帰ってきた。
これで話ができると思った。だが、


「…………」


顔を下にむけたまま無言で立ち上がる。
着物も、長く伸びた髪も引きずったまま檻に近づいてくる。


「伊月!?」


制止させようと言った言葉さえ、今の伊月には届いていない。


- 1/3 -

back