side水戸部


やはり独房と同じ真っ白いこの部屋は、
いつもは面会や、対処が保留になった妖怪が入れられる部屋。
小金井が頑張ったおかげで、見積もっていた時間より早くに伊月さんを連れてこれた。
今は長テーブルに、俺達対伊月さんの形でパイプ椅子に向かい合わせに座っている。


「ごめんね?突然連れ出して。
別にオレ達は、君を傷つける気はないからね?」


小金井が伊月さんに説明をはじめるようだ。
独房からここに向かうまでに、小金井にかけた術は解いてある。
つまり小金井はこの部屋にいる全員の思考が読める。
いろいろ無理を言い、大坪さんにも頼み、今この部屋に術はかかっていない。
その為、伊月さんの姿は独房に居たときと違くなっている。


「念のために確認ね?ホントにこの人見たことない?」


最終確認を始めている小金井。
やっぱりアレをやるらしい。アレっていうのは小金井の記憶を見る能力。
実は俺はアレをあんまりやってほしくはない。
日向にやったときもかなり消耗していたからとても心配だ。
ここに来るまでにさんざん小金井に確認もしたから、
今さら俺が心配していてもやるのだろう。
それでも心配なものは心配だ。


まぁ、この思いも今の小金井には筒抜けなんだろう。


伊月さんが声も出さないうちに小金井がうなずいたとこを見ると、
伊月さんの思考を読んでいるのだろうし。
伊月さんは、口にする前にうなずかれて困惑しているけども…。
俺達のことは何にも話してないから仕方ないけど。


「んじゃね〜、だいたい8年前あたりのこと思い出してね!」


小金井の言葉に「?」を浮かべながらも、目をつぶり、
小金井に言われたとおりにしているようだ。


「さぁ!オレと一緒にタイムトラベル!!」


どこで覚えたのかカタカナ英語を言い、
小金井は伊月さんの横に立ち、頭の上に手を置き目を閉じた。


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