side日向
俺はコガに言われ、気付いたら走り出していた。
目的地はわかってる。俺の足は研究所に向かっていた。



研究所の門を走りぬける。
警備の陰陽師の2人が後ろで騒いでるが、今はそれどころではない。
研究所は独房の目と鼻の先にある。というより独房が研究所の近くにあるのだ。
なにせ先祖返りを入れている檻だ、手元に置いとくべきであろう。


目当ての場所についた。
目的地は研究所の中にある、事件がファイリングされている、資料室Aだ。
なぜAかというと、事件という意味の英単語の頭文字がAだからだ。
普通の術についての書物がある資料室もあるため、Aがついている。
普通の資料室は、資料室。事件の資料室は、資料室A。
ここに俺は、伊月の両親についての資料を探しにきた。
既にファイリングはされているだろう。実際あった。
伊月のことは親父が保護した。親父の棚に見事あった。
資料はかかわった人ごとに並べて入っている。
親父は長いこと働いているから棚がぎゅうぎゅうで、ファイルがキツくてなかなか抜けない。
仕方ないから思いっきりひっぱったら近くの資料やら何やらまで落ちてしまった、はぁ…。
このままにしておくことはできないので、落ちた資料をとるためにしゃがむ。
背表紙が見える方向に開いたものや、内容が見えるような風に開いているもの、
開くことなくタイトルが見えるようになっているものや、見事に立っているものまである。
ていうかコレすごいな。落ちて立っているとか奇跡じゃね?
と、じゃなくて早く入れなおさないと。
伊月のは家に帰ってから見るとする。そのほうが集中できるからだ。
落ちたものを拾っていたら、
内容が見えるようになっていたものの中に気になるものがあった。


“日向家伝家の宝刀紅桜で―――”


伝家の宝刀?紅桜?
親父の口から聞いたことのないようなことが書かれていた。
そんなものを家で見たこともない。
頭の隅に“伝家の宝刀紅桜”を置いておき、
そのファイルを元の場所に入れて、俺は伊月のファイルを持って部屋を出た。


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