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おかゆを食べ終えてゆっくりしていたら日向が来た。
伊月ちゃんの記憶について聞きに来たのだという。
そりゃそうか。そのために行ってきたんだもんね。
でも正直伊月ちゃんの記憶を覗いた時のことを思い出しそうだから、
逃げていたんだけど
日向が来ちゃったからそういうわけにはいかないか…。


「簡潔に言うと、伊月ちゃんに日向と会った記憶はない」


ズバッ!といったオレの言葉に日向はガーンと落ち込んだ。


「というか日向の記憶だけがないわけじゃないんだ」

「?どういうことだ?」

「伊月ちゃんは連れてこられた日から、
ある日までの記憶をなくしてる。
ううん、違うな、封じてる。
オレは一応見たんだよ、封じられてるほうも
怖かった…。当時の伊月ちゃんの感情も俺の中に入ってきて…」


震えが止まらない。顔もきっと青いだろう。


「伊月ちゃんは幼いながら仕方のない苦痛を受けて
恐怖に駆られて、感情も何もかもを閉じていたんだ。
そりゃ日向に会った記憶もあるわけないよ。
ずっと心を閉じていたんだから。
それでも痛みは毎日襲ってきて、逃げられもせずに毎日痛みを我慢してたんだ。
語って聞かせたくらいじゃ想像もできないほどの地獄の日々だった。
誰も、同じ痛みを感じたことのある人しか共感できないくらいの地獄に日々だ」


言い切った後水戸部がオレを抱きしめてくれた。
きっと水戸部も日向もひどい顔になっているだろう。もちろん俺も。
でも今オレは他の人まで気にしてられない。
水戸部に甘えるだけ甘えてこの気持ちと記憶に蓋をしたい。
これはオレに起きたことではない。これは今起きたことではない。
だから、水戸部に甘えて早く蓋をしたい。
いまさらオレが思っても遅いものなのだから、
きっとオレが忘れても許される。許してもらえるだろう、そう願う。


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