そのまま、どれくらい少女を見ていただろうか。



周りに何かが溢れてきた。
それは伊月の妖力で、
普通は、怖いはずで、不気味なはずで、気味が悪いはずなのに、
なぜか、伊月の妖力は怖くもなんともなかった。むしろ暖かいとすら思えた。
他の妖の妖力は、すごく怖かったのに。



しばらくして、伊月の妖力が檻に触れた。


「うぁぁぁぁぁ!!」


瞬間独房に響いた綺麗なソプラノの声。それは伊月の絶叫。
顔を上にあげ、口を開き、目をつむっている伊月。
見ているだけでも辛かった。



伊月が落ち着いた後、俺と父さんは家に向かった。
あたりは薄暗くなっていた。
家に帰りながら俺は父さんに聞いた。


「なんで俺をあそこに連れて行ったの?」


別に責めていたわけじゃなくて、純粋に不思議だったから。
連れって行ってもらったことは、逆に感謝さえしている。


「あの子、伊月は、お前と同い年なんだ。
家族を思って一人であそこに入った。
妖力-チカラ-が強すぎて毎日アレを喰らってる
耐えらんなくなったんだろうな。
入って1年くらいして、あいつの目に光がともんなくなったよ。
お前を連れて行ったのは同い年の子に会ったら
伊月の目に光が入るかもしれないって思ったんだが…」


小さかった俺に、はぐらかさず、わからないだろうにきちんと説明して
父さんは力なく笑った。初めて見る顔だった。
だから余計に思ったんだ、俺が何とかしてやりたいって。


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