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あっという間に研究所につき、
そのまま俺の言ったことのないところに連れて行かれた。



そこはどこもかしこも真っ白で、
だけど俺にはそこがひどく真っ暗なような気がしたのを覚えている。



気味が悪いほど白いそこをどんどん進んでいく。
父さんに手を引かれながら周りを見る。
そこには檻があった。
歩いている最中に見かけたどの檻にも何も入ってはいなかった。



キョロキョロしながらついて行っていたから、
父さんが立ち止まったことに気付かず、父さんにぶつかって止まった。



父さんが止まったのはある独房の前だった。
一番奥の独房だった。



やっぱり他の独房と同じ造りで、どこもかしこも真っ白で、
それでいて真っ暗なそこに
黒い下地に赤紫色の紫陽花が咲いている着物を着た、人がいた。



壁に背を預けて座っていたのは、俺と同い年くらいの少女だった。
人が来たにもかかわらず、少しうつむき気味で斜め下を見ていた。


「よっ、伊月。久しぶりだな」


父さんが少女-伊月-に声をかけた。
伊月は声に反応して顔を上げた。



驚いた。ただただびっくりして見ていた。
綺麗な整った顔にある漆黒の瞳は、光が入っていなかった。
ただその瞳にオレと父さんが鏡のように映っているだけで、痛々しかった。


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