博士からツタージャの入ったモンスターボールを成り行きで受け取ってしまったあと、あの場に残るのは気が引けたので直ぐに家に帰った。
トウコのお母さんは早めに帰ってきた私を見て、"早いわね"とは言ったけれど特に何も突っ込むことはなかった。
トウコの部屋に戻って直ぐに、マメパトの姿から通常の姿に戻ったミュウは隣でだらしなく寝そべっている。
腰についた初めてのモンスターボールは、触るとほんのりと暖かくて気持ちがいい。
私、トレーナーになったんだな〜なんてボールを撫でながら暢気に考えていると、今の今まで特に何も言わなかったミュウが私を意味ありげにみた。
《…ねぇ、どうするの?》
いきなりすぎて、何が言いたいのか分からない。
そういうような顔をしていると、ミュウは分かりやすく溜め息を吐いた。
《君、いずれは自分の世界に戻らないといけないのに…そのポケモンどうするのって聞いてるの。》
言われてから初めて気が付き、ハッと目を見開いた。
そうだ、私は結局はもといた場所に還らないといけないのに…。
「…考えてなかった。」
正直に言うと、ミュウは呆れたように再び溜め息を吐いた。
《正直、君が居なくなったあとソイツがどうなるかなんてぜんっぜん興味無いけど…そういうの、軽はずみなんじゃないかな〜》
ぜんっぜん、をやけに強調してそう言い切ったミュウは、寝そべったまま動いていない。
「………。」
ミュウの背中を見つめながら何も言えなくて、モンスターボールを撫でていた手もぴたりと止まる。
《僕が君に付いて行ってあげるのは、そういう不幸なポケモンを無くすためだったけど…あれ?意味無いね!》
他人事のように軽々とそう言うミュウに、少し苛ついた私はカッとなって口を開いた。
「そういう風に言うなら事前に教えてくれれば良かったじゃん!」
だけどミュウは平然と、
《え?何で。》
と言った。ミュウは体を起こしてきょとんとした顔で私を見た。
「なんでって…言ってくれれば、ちゃんと分かったから!」
睨むと、ミュウは不思議そうに首を傾げた。
《何で僕に怒るわけ?こうなったのは自分のミスでしょ?お門違いも程々にしなくちゃ駄目だよ》
そう言われると、何も言えないが何処か釈然としない。
半ば苛々しながらミュウから目を反らした。
「今更だけど、性格悪くないか…」
ミュウは可笑しそうに、クスクスと両手を口に当てて笑った。



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