カリカリに焼けたトーストを齧りながら部屋の中をキョロキョロと見回す。
特に変わったものは無いけれど綺麗に掃除された埃一つないフローリングに、お洒落な観葉植物、オレンジ色の照明。
全てが新鮮で、他人の家に訪問したときのような独特な緊張感が私を包む。
トーストの屑を零さないように慎重に食べて、出されたサラダやイチゴジャムの乗ったヨーグルトを出来るだけ行儀よく食べる。
トウコのお母さんは洗濯物を干しているところでベランダにいるのでリビングにはいない。それが有り難かった。
やっと食べおわって食器を流し台に運び、それを洗う─何時もならこんなこと絶対にしないが…。
最後に、テーブルの上を台拭きで拭いてから終了。
ちょうどそのころにトウコのお母さんが洗濯物が入っていた籠を片手にリビングに戻ってきた。
「あら、洗ってくれたの?気が利くわね〜」
嬉しそうに微笑みながら籠を洗面所に片付けにいくトウコのお母さんは、去りぎわに思い出したかのように「そう言えば、博士が呼んでたわよ。お願いがあるって…、今から行ってきたらどうかしら」と言った。
「あ、ありがと。じゃあ行ってくるね」
当たり障りのない言葉を選び、にこりと笑みを作る。
トウコのお母さんはニコッとしながら再びリビングから出ていった。
─それにしても、ミュウはどこに行ったんだろう。
別に何処に行こうが関係な…くはないけど、唯一私の"本当"を知っているミュウには、出来るだけ傍に居てほしかった。心細いから。

トウコのお母さんに言われたとおり研究所に行こうと玄関の扉を開ける。
広がる景色は、やっぱり私のまったく知らない世界。
何処の子かは分からないが、ミネズミとヨーテリーが二匹並んで戯れているのを見ると心が和む。
ばたん、と扉を閉めて2、3歩踏み出すが、はた、と気が付いた。
「研究所どこ…?」

ビューと冷たい風が吹き付けて、春にも関わらず枯れた落ち葉が舞った気がした。



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