長い道程を走行した後無事にカノコタウンに到着した私は車を降りた瞬間外で待機していたアララギ博士(父じゃないよ!)の熱い抱擁を受けた。
ああ、私はトウコじゃないのにこの胸の騒めきは何だろう。
トウコ(私)が無事に見つかったことを心から喜んでいる博士の目には涙が浮かんでいて、罪悪感に駆られる。
その後、私の心身を労ってアララギ博士は"家に帰ったら直ぐに寝るのよ!"と言って研究所に戻っていった。
ベルとチェレンは博士の言葉にさらに念を押してからそれぞれの家に入っていった。
そして、今に至る─私はトウコの部屋で唸っていた。
いくら今はトウコさんに成っている(?)とはいえ他人の部屋にいる私の心境は、居心地の悪いことこの上ない感じだ。
でも私も人間であることには変わりはなく…少し、好奇心が、沸いてきた。
そして─手短なタンスの引き出しを何となく開けてみた。
中はとても綺麗に整理整頓されていて、入っているのは色々な洋服。
しかも、サイズを見てみればまるで私のために誂えてあるかのようにピッタリ。
地味に感動した私は、次々と部屋の引き出しを開けていく。
そして─中身を物色中のとき、いきなり部屋の扉が開いたので驚いて手が止まった。
「すすすみませんっっ!」
忍者もびっくりな勢いで引き出しから弾かれたように離れて扉を開けた人物を見る。
トウコのお母さんだった。
「どうしたの?…卵粥作ったけど食べるわよね、机に置いとくね」
不思議そうに私を一瞥した後、お粥を机の上に置いて去っていった。勿論、去りぎわには"早く休みなさい"の一言も忘れずに。
暫く宇宙と交信していた私だったけれど、やがてハッと意識を取り戻して静かに引き出しを元に戻した。
ごめんね、トウコさん。
その時、コツンコツンと窓に何かが突いているような音が部屋の中に響いた。
「え…、」
急いで窓を開けた先にいたのは見覚えのありすぎるマメパトだった。
多分、ジャイアントホールで仲良くなった…ポケモンだと思う。


prev next

bkm



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -