計り終えた体温計の画面を見て、ジョーイさんはホッと息をついて口を開いた。
「平熱ですよ!」
にこにこと笑みを浮かべるジョーイさんに苦笑いしながら"そうですか"と応えた。
「あの、聞きたいことがあるんですけど」
「なんですか?」
平熱だったことでジョーイさんは先程とはうって変わって"安静"を強要したりせず、にこやかに私を見た。
「私って、一体何処にいたんですか?それと、誰に助けられたんでしょうか…」
体温計を棚のなかにしまいながらジョーイさんは答えた。
「貴方はジャイアントホール奥の森で気を失っているところを救出されました。きっと神隠しか何かなのでしょうか…ご無事で良かったです」
しまいおわったジョーイさんは私の横になっているベッドの横に丸椅子を置き、そこに腰を下ろした。
「貴方を助けたのは通りかかったトレーナーなのですが…もう旅立たれてしまいました」
ジャイアントホール…それならば此処はカゴメシティのポケモンセンターなのだろうか?
というか、神隠しって…まさか"トウコ"は今現在行方不明にでもなっているのだろうか?
悶々と考えながら、取り敢えず"通りかかったトレーナー"という人物に感謝感激雨霰。
直接お礼を言えないのはとても残念なことだけど、旅立ってしまったというなら仕方がない。
「ありがとうございます、そうなんですか…」
ジョーイさんにお礼を述べてから、寝返りを打って布団に潜った。
ちょうどその時、バタンと勢い良く部屋の扉が開き、バタバタと騒がしい足音が響いた。

「「「トウコ!!」」」

男の子と、女の子、そして女の人の大きな声がした。聞き覚えは全く無く、誰だか予想がつかない。
そのため確認するためにゆっくり被っていた布団を目下まで下ろしてその人たちを見ると、チェレン、ベル、トウコのお母さんらしき人達だった。
「心配したんだよ…!今まで何処に行ってたの!?」
ベルが声を荒げながら私に近寄った。綺麗な黄緑色の瞳には涙が溢れている。
「えっと……」
此処で"私、トウコじゃないんだ"なんて言えるはずもなく、ベッドから起き上がった私は気まずそうに頬を掻いた。
「とにかく、無事で良かった」
そう言い終えるとベルは泣き出してしまい、それをチェレンが宥める。え、この2人フラグ…!
トウコのお母さんは、泣きそうな表情を浮かべながらギュッと私を抱き締めて、静かに涙を流す。
どうしよう、私…トウコじゃないのに…!
胸の中で渦巻く違和感と闘いながら、縋り付くように私を抱き締めるトウコのお母さんの背中に戸惑いながら腕を回した。

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ジャイアントホールにマメパトいないよね!3猿いないよね!
いや、うん、間違いじゃないですよ、わざと…!



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