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春の魔女と心臓



春高代表決まったんだってね。
おめでとう。

そんな言葉を今日1日で何回周りから聞いて、それから何回飲み込んだだろうか。

朝学校へ来る途中に会った友達には「ちゃんと言えるといいね」と背中を押され、よし、と意気込んですぐ。靴箱の前で彼を見た瞬間出かかった言葉は、同じクラスの男子の声にかき消された。ぐっと詰まる息と、彼の後姿が相まって朝からなんともやるせない気持ちに胸が詰まる。気持ちを切り替えて次のチャンスを狙おうとするも、HRでは先生が「バレー部春高進出すごいな!おめでとう!」なんて声を掛けるものだから、そこからは称賛のシャワーだ。降り注ぐ言葉に孤爪くんはいつもと変わらぬ気力の無い声で返事をしていたが、私は若干眉を潜めていたのを見逃さなかった。それから授業の合間の時間にも孤爪くんは誰かから声を掛けられていたし、昼の休憩時間は教室に居なかった。つまるところ、私が彼に声を掛ける隙なんて1秒だって無かったのだ。

そして現在。
私は一縷の望みをかけて、部活終わりの孤爪くんを自分の所属する部室で待っていた。ここまでくるとただ一言おめでとうと絶対に言ってやる、という半ば意地のようなものになってきていたが、彼をお祝いしたいのは素直な気持ちだった。なんでこんな意地になっているかって、そりゃあ、私が孤爪くんを憎からず思っているからなのだけれど。そもそも彼とは1年の時から同じクラスで、席が何かと近いことが多かった。だから他の女の子よりは話すことが多かったし、


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