合流

船から降りて陸に上陸する。
ゆらゆらと揺れる船から桟橋に降り立つと、どこか頭がくらくらした。


「こっちよ、梨葉」


「あ、はーい!」



灼熱の太陽の下、瞳子姉さんについてゆくと、港のすぐ側にTVで見慣れた青いキャラバンが止まっているのが見えた。
キャラバンの隣には作業着?らしきものを着た初老の男性が。
あれは確か…運転手の古株さん?かな?

雷門中のシンボルともいえる青いキャラバンに、実際に雷門中のメンバーでもある人間を見て、私は明らかに挙動不審になっていた。
船上では楽しみかも、だとか言っておきながら、やはり実物を目にすると緊張してきたのだ。
しかしキョロキョロと辺りを見回している不審な私を気にする様子もなく、姉さんは古株さんの方へ向かっていく。



「古株さん、」


「おぉ、監督!どうですか、炎のストライカーの情報は手に入りましたか?…ん?そちらの方は?」



古株さんから視線を向けられ、私はまたもや明らかにびくりと飛び上がった。
憧れの人たち、TVの中の存在だと思っていた人が私を見ているのである。
すっかり萎縮してしまった私は、口を利くことすらできなかった。



「いいえ、残念ながら…しかし代わり、といってはなんですが、新しいメンバーを連れてきました。」



挨拶くらいしなさい、と言わんばかりの視線を向けられ、そこで漸く我に帰った私はオドオドと口を開いた。



「泉堂、梨葉です。よろしくお願いします。」


「名字は違いますが…彼女は私の妹です。…ところで、みんなは?」


「聞き込みに出ています。」



姉さんがそう問うと、キャラバンの後ろから凛とした声が聞こえた。
はっきりとした、綺麗な声だ。
声の主へ視線を遣った瞬間、私は自分の脚が情けなくも震えているのを自覚した。
私の目は、ゆるくウェーブのかかったオレンジみのある茶髪の少女を写していたのである。
白い日傘を差す姿から上品さがにじみ出ている。
間違いないー…マネージャーの雷門夏未ちゃんだ…!


「ちょうどよかったわ。雷門さん、この子は…」


「先ほどの話を聞いていました。泉堂梨葉さん、ですよね?」


そう言って、わたしににこりと微笑んだ雷門さんは悶絶するくらい綺麗だった。
私は緊張のあまり「うっ…はぅ…」と妙な声をあげてしまい、姉さんから冷たい視線を頂いた。

「雷門中理事長の娘の雷門夏未よ。マネージャーとしてキャラバンに同行しているの。よろしくね。」


「は、はい…!よろしくお願いします、ら、雷門さん!」


「夏未でいいわよ、堅苦しくては緊張も解けないでしょう?梨葉。…と呼んでもいいかしら?」


「は、はい…!な、夏未…!」


ぼぼぼっと顔が熱を持つ。
あの、あの雷門中のマネージャーの1人と私はお話をして、彼女を「夏未」と呼び、「梨葉」と呼ばれているー…これほどむず痒い恥ずかしさがあろうか。


「梨葉、キャラバンに荷物を置きに行くか?わしも手伝うぞ。」


「そうね。あまりあなたの荷物は多くないけど、手伝ってもらいなさい。ついでにキャラバンの中も見て置いたらどうかしら。」


「う、うん!…お、お願いします、古株さん。」


私は着の身着のままこちらへ来たので、わずかながらにある私の荷物は来る途中で買い足したものだ。
そんなわけで生活必需品としての下着やタオルは少ない割に、キャラバンの旅ではあまり必要がないと思われる教科書類はやけに多い。


「こっちじゃよ、荷物はわしが運ぼう」


「あ、すいません!ありがとうございます!」


古株さんがキャラバンの側面にある倉庫を開けると、色んな人の荷物が詰まっていた。
スポーツバッグの脇に「円堂」と書いてあるものを発見し、胸が高鳴った。


本当に、本当に私も雷門中のメンバーになったんだ…!!


古株さんの手によって私の鞄がみんなの荷物が詰まっている倉庫へ投げ込まれる瞬間が、どうしようもなく嬉しかった。



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