SとNのであい




昔の夢(おもに南雲について)を見た俺はその後二度寝することもなくぱっちりと目が覚めたので登校する準備をした。


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教室に入ると誰もいない。当たり前か、まだ七時半過ぎだ。
俺は荷物を置き席についた。

昨日ここでちゅーしたんだよな、って俺は乙女か。
暇だし準備室行くか。そう思い、立とうとしたとき扉の開く音がした。
音のしたほうを見るとそこにはちゅーした相手南雲晴矢本人がいて、俺と目が合うと驚いたように目をかっぴらいて下を向きズンズンと入ってきた。

これは死亡フラグなのか?殴られるのか?頭はそのことばかりを考える。
トス、っと鞄を置き南雲は静かに席についた。アホみたいに構えてた俺はどこか拍子抜けした。

俺は気づかれないように南雲を盗み見たが、南雲は机に突っ伏していた。あれ、これは一応死亡フラグは回避できたということかな…。
つか、何も言ってこないとかどういうことだ。昨日のは夢ってことで片付けられてるのか?いや、もしかしたら実は南雲は経験豊富で俺がしたキスなんて屁でもねぇぜぺっ!とか思ってんのか?!隣の席なのに喋んねぇとか生殺しもいいとこだ。


「なあ…、」

俺があれこれ考えていると南雲から話しかけてきた。慌てて南雲の方を見たがやはり突っ伏したままだった。

「…なに?」

「…んで、・…だよ」

「え?」

ボソボソと言われ聞きずらかったので聞き返した。
暫くしたら南雲がバッと起き上がり少し赤い顔をして
「っなんで、キ、キスなんてしたんだバカヤロー!!」
「・・・・・。」

息を切らして言う南雲。
やべ、可愛い。あれ?昨日もこんなこと思ったわ。つか、ずっと思ってるわ。
なんでって、そりゃ…

「好きだから」

「!!」

自然としちゃったんだしそんなもの答えは明白だ。
本能的にしましたってだけだ。あわあわとしながら目をそらす南雲に正直悶絶しそうだ。
つか、そんな態度をとられるとこっちは期待しちゃうんだけど。

「順序間違えたけど、好きだよ南雲。本気で」

まっすぐ、南雲の金色に光る眼を見て俺は気持ちを伝えた。

南雲は俺と目を合わせたあと逸らして俯いた。


まあ、ノンケなら当たり前の反応だよな。気持ち悪がって当然だし、たぶんもう二度と関わりあいなんて持ちたくないだろう。
それはそれで寂しくなるけど覚悟の上だ。


「俺、」
長い沈黙、時間にすれば約数分だがその沈黙を破るように南雲は口を開いた。

「俺、その、男に告られたこともないし…」

うん、まあ大多数の人はそんな経験ないだろうよ。

「ましてや、男を好きになったこともない」

いいよいいよ。もう一思いにバッサリいってくれ!

「けど、その、なんつーか、別に気持ち悪いとかは思ってねぇからさ」

俯きかけていた自分の顔があがる。

「思わねぇの?」

こくり、と頷く。
そのことが嬉しくて、まだ脈があるんじゃないかと我ながら諦めの悪い考えが頭を埋める。

「…そのさ、別に今すぐ付き合ってほしいとかじゃない、困らせたいわけじゃないんだ」
「友達からとかでも、全然うれしいから」

「だから、まずは友達から。南雲に俺を知ってほしい」

例え気持ちが恋愛感情にならなくても、仲良くなれるなら!と俺は内心縋る思いでちょっと考えれば、それは無理だろ。と思うようなお願い(俺的には)をした。うん、してしまった。
なんなんだろうな、もう。南雲が相手だといつも冷静な考えができなくなる。
絶対無理だろ。自分のこと好きなんて言ってる男と友達になろうぜ!なんて…

「友達なら、構わねぇけど…」

「まじ?!」

「お、おう」

俺の食いつきっぷりに少したじろぎながらも南雲は了承してくれた。
まさかのOKでたよ!幸せすぎて夢かとすら思った。

「よろしくな!南雲」

「わっ?!ちょっ、バカッ」

嬉しさのあまり目の前にいた南雲に抱きついてしまった。いや、まあこれはこれでラッキーかな、へへ。

「ごめんごめん」

「ったく、油断も隙もねぇ…。(心臓がもたねぇっての)」

「?なんか言ったか?」

「ッなんも。つか、友達になったんだからあんまこういうことすんなよ。昨日のキスとか…、絶対だからな!」

「えー。けち」

「さっきまでの態度とは大違いだな」

じと、と愛しの南雲に睨まれたので俺は「わかってる」と言った。

「じゃあさ、名前で呼んでよ」

「名前?」

「うん、そう俺の名前。俺も南雲のこと下で呼んでいい?」

「べつにいいぜ、それくらい」

「じゃあ、晴矢」

「なんだよ名前」

「あらためて、よろしく」

「おう」



いろいろあったけど、俺はなんとか南雲晴矢の友人というポジションを手に入れた。スタートラインにやっと立てた。あとは、まあなるようになるだろう。どうやら南雲、…晴矢も男といえど好意を持たれるのは満更ではないらしい。
え?腹黒くないかって?
気のせいです、たぶん。


「じゃ、俺旧美術準備室行ってくるから」

「え、あぁ、…なんで?」

「…ムラムラするから。えへ」

「ッ!!おま、もう帰れ!」



ジュルリ。


(俺、無事でいられるのか?身の危険を感じる)
(あ〜、セクハラしないとは言ったけど自信ねぇ…)







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